広島市内でも局地的なエリア限定の「ホルモン天ぷら」
「ホルモン天ぷら」という料理を知っているだろうか。広島市内でもごく一部のエリアでしか食べられていない、超局地的なご当地グルメだ。
ホルモン天ぷらを出すお店が集中するのは、JR広島駅から西へ約4kmのエリア。西区福島町を中心に、隣接の都町・小河内町などだ。この小さなエリアに提供店が5軒ほど存在している(2019年12月現在)。現在ではメディアで取り上げられるなどして以前より知名度が高くなったため、エリア外でもホルモン天ぷらが食べられる店舗は増えた。
とはいえ、現在もエリア的には福島町界隈が中心だ。そんなホルモン天ぷらは、提供方法なども独特らしい。
そこで、実際に広島へ食べに向かった。
ホルモン天ぷらの老舗「あきちゃん」
やって来たのは、西区福島町にある「あきちゃん」。広島電鉄の福島町駅から北へ3分ほどの場所にある。
▲「あきちゃん」という店名は、創業者夫妻の夫のニックネームに由来
あきちゃんは、創業およそ30年という老舗だ。
▲店内には、カウンター席とテーブル席がある
平日の営業開始直後にもかかわらず、取材中はお客さんがたくさん訪れていた。
立地的な事情から生まれた
あきちゃんスタッフの髙橋裕美(たかはしひろみ、写真下)さんに、ホルモン天ぷらの歴史や特徴について聞いてみた。
──ホルモン天ぷらとはどんなものですか?
髙橋さん:名前のとおり、ホルモンを天ぷらにしたものです。ただ、ホルモンといったら小腸(マルチョウ)や大腸(シマチョウ)の肉をイメージすることが多いと思います。ホルモンという言葉は狭い意味と広い意味がありまして、小腸や大腸は狭い意味のほう。広い意味では、内臓の肉全般を指します。ホルモン天ぷらのホルモンは、広い意味=内臓肉全般です。ただし、当店では小腸の天ぷらはないんです。小腸は脂が多いので。
──では、なぜ福島町界隈にホルモン天ぷらのお店が集中しているのでしょうか?
髙橋さん:昔、福島町に食肉施設があったことが理由なんです。今と違って、内臓の肉は使い道がなくて廃棄されていました。でも、それはもったいないので、ホルモンを使った料理を提供するお店が自然発生的に生まれたんです。食肉施設がすぐそばですから、新鮮なホルモンが安くたくさん手に入りますし。現在も残るホルモン天ぷらの古いお店では、戦後すぐくらいからあるお店もありますよ。
なお、近年メディアでホルモン天ぷらが取り上げられることが増えたため、ホルモン天ぷらが食べられるお店が市内中心部や郊外などにも少しずつ増えているという。
ちなみに食肉施設は現在、市内の別の場所へ移転している。
──ホルモンを使った料理はいろいろ考えられますが、どうして天ぷらに?
髙橋さん:昔はいろいろな料理があったようですよ。ただ、なぜ天ぷらに特化していったのかはわかりません。私の想像では、いろいろなホルモン料理の中でも、天ぷらが一番お客さんの評判が良かったからではないかなと。ちなみに天ぷらのほかにも、ホルモンを使った汁料理「でんがく汁」や、それを応用した麺類なんかもありますよ。あと、おでんもおすすめです。ダイコンなど定番のほかに、ホルモンも入っています!
▲あきちゃんのおでん。しみていてこれもまた最高
あきちゃんの天ぷらは常に揚げたて!
──福島町界隈にたくさんあるホルモン天ぷらのお店ですが、あきちゃんならではの特徴は?
髙橋さん:ウチのお店では、揚げたての天ぷらが食べられることが自慢です! 必ず注文を受けてから揚げているんですよ。だから熱々で、衣がサクサクの天ぷらが楽しめます。
──どんな種類のホルモン天ぷらがありますか?
髙橋さん:当店のレギュラーメニューとして、6種類のホルモン天ぷらを用意しています。すべて牛の肉で、チギモ(脾臓)・オオビャク(大腸)・ビチ(赤センマイ、ギアラ=第四胃袋)・千枚(センマイ、第三胃袋)・ハチノス(第二胃袋)・白肉(シロニク、ミノ=第一胃袋)です。これ以外にも、入荷状況によってガリ(気管)やフワ(ヤオギモ=肺)の天ぷらも食べられますよ。初めて来たときは、レギュラー6種類をひとつずつ盛り合わせで注文するのがおすすめです!
ハサミとトングで自ら切って食べるのが醍醐味
──おすすめのホルモン天ぷらの楽しみ方を教えてください!
髙橋さん:福島町あたりのホルモン天ぷらは、自分でカットして食べるお店が多いんですよ。あきちゃんでも、セルフカットして食べるシステムです! すべての席に、小型のまな板・ハサミ・トングを置いています。これらを使って自分の好きなタイミングで、自分の食べやすいサイズにカットしてくださいね。
▲あきちゃんの各席には、ホルモン天ぷら専用のまな板・トング・ハサミが常備されている
──自分でカットするなんて、初めてです! なぜこのシステムに?
髙橋さん:実は資料などがないので、なぜこのシステムになったのか私もわからないんですよ……。もしかしたら、セルフうどんのように店側の負担を軽くするためかもしれませんね。小さなお店が多いので。
──髙橋さんが思う、ホルモン天ぷらの魅力は?
髙橋さん:煮たり焼いたりして食べるホルモンよりも、天ぷらのほうが食べやすいと思うんです。あと衣が付いているので、見た目が苦手だという人も食べやすいんじゃないかな。それと、各ホルモンそれぞれの味や食感を食べ比べてみるのも楽しいですよ!
酢醤油と粉唐辛子もポイント
まずは食べる前に、ホルモン天ぷらはどんな味付けで食べるのかを確認したい。
──ホルモン天ぷらは何を付けて食べるのですか?
髙橋さん:ホルモン天ぷらでは、酢醤油と粉唐辛子を付けて食べるお店が多いんです。当店も酢醤油と粉唐辛子を付けます。酢醤油と粉唐辛子もホルモン天ぷらのポイントなんですよ!
▲卓上には、酢醤油と粉唐辛子の容器がある
▲酢醤油をつけることで、天ぷらをサッパリと食べることができる
髙橋さん:この酢醤油は、あきちゃん特製。当店秘伝の酢醤油なんです!
▲粉唐辛子は、お好みで入れよう
▲ピリッとした辛さで味が引き立つ
辛いもの好きなお客さんの中には、酢醤油より粉唐辛子のほうを多く入れる人もいるという。
さまざまな内蔵の部位が天ぷらに
それでは、いよいよホルモン天ぷらを実食。
▲席に座ると、卓上に用意されているまな板・ハサミ・トングの三点セットが目に入る
以前は包丁で切っていたそうだが、現在はハサミで切るスタイルだ。
▲年季が入っていて趣のあるまな板
髙橋さんのおすすめどおり、基本の6種をひとつずつ盛り合わせで注文した。
▲注文を受け、天ぷらを揚げていく
▲揚げたてのホルモン天ぷら基本6種盛り!
左から、チギモ・オオビャク・ビチ・千枚(センマイ)・ハチノス・白肉。
▲店内の説明書きのとおりの並びで盛り付けられている
- チギモ(120円)……牛の脾臓
- オオビャク(120円)……牛の大腸
- ビチ(120円)……牛の第四胃袋。赤千枚、ギアラとも呼ぶ
- 千枚(センマイ、120円)……牛の第三胃袋
- ハチノス(120円)……牛の第二胃袋
- 白肉(150円)……牛の第一胃袋。ミノ
※価格は消費税込み、2019年12月現在
プニプニ食感とほのかな甘み
さあ、どれから食べようか……。
まずは、オオビャク(120円)から。牛の大腸だ。
▲トングでオオビャクの天ぷらをまな板の上にセッティング
▲そしてトングで押さえ固定しながら、ハサミを入れて……
▲好みのサイズにカッティング!
▲オオビャクの断面は、こんな感じ
▲粉唐辛子をかけた酢醤油に浸して、いただきます!
オオビャクは、プニプニとした食感。そしてほのかな甘味がある。
千枚(センマイ)はあっさり風味に
▲つづいて、千枚(センマイ、120円)。牛の第三胃袋だ
衣が付いているから見えないが、たくさんのビラビラとしたヒダがあるのが特徴。
▲千枚(センマイ)も大胆にカット!
上手に切ることができた。
▲断面はこんな感じ
▲酢醤油・粉唐辛子をたっぷりとつける
焼肉などで千枚(センマイ)を食べると、コリコリとした食感がある。しかし、天ぷらにするととても柔らかな食感に。そして、サッパリとした味だ。
屈指の注文率を誇るビチ
▲次は、ビチ(120円)
牛の第四胃袋で、焼肉などではギアラという名前で呼ばれている部位だ。
▲ビチをカットした断面
断面を見てのとおり、ビチはかなり分厚い。一見するとベーコンのようにも見える。
▲ビチは、モチモチとした食感だった
基本の6つの部位の中では、ビチが一番脂っこい味。そして脂分が多いためか、甘みも一番感じる部位だと思った。
髙橋さんによると、ビチは1・2を争う注文率の高い部位だという。
コリコリ度NO.1の白肉(ミノ)
▲次は、白肉(150円)。牛の第一胃袋で、焼肉などではミノという名前でおなじみだ
細長く、笛のような見た目が印象的。
▲白肉をカットしたところ
▲まるでチクワを半分にしたような見た目だ
▲白肉は、とてもコリコリした食感。基本6種の中では一番コリコリ
白肉を食べていると、ほのかな甘さも感じた。なかなかクセになる味わいだ。
髙橋さんによると、白肉はビチとならんで注文率の高い部位とのこと。
また、白肉は普通に揚げると縮むので、衣をつける前に、衣の元となる天ぷら粉を白肉にまぶしてから、衣をつけているそうだ。
ハチノスは一番天ぷら向き!?
▲5番目に食べたのは、ハチノス(120円)。牛の第二胃袋になる
▲ハチノスをカット!
ハチノスは、名前のとおりハチノスのような見た目がグロテスクで、苦手だという人もいる。しかし、天ぷらにすると、衣で隠れるので食べやすい。ホルモン天ぷらのメリットだ。
▲ハチノスの断面。グロさは感じない
▲ハチノスを食べてみると、フワフワっとするような柔らかな食感だった
焼肉などで食べるハチノスは、コリコリしている印象だった。しかし、天ぷらはコリコリ感はあまりなく、別の部位のような感覚に。
レバーのようなチギモ
▲最後に食べるのは、チギモ(120円)。牛の脾臓にあたる
見た目も独特で、衣の下から濃い褐色をした肉が透けて見える。
▲チギモをカットしたところ。独特の雰囲気がある
▲チギモは、とても柔らかくフワっとした軽やかな食感だ
チギモの味わいや食感は、まるでレバーのような感じ。レバー好きは、はまる味だろう。
髙橋さんいわく、基本6種のホルモン天ぷらの中で、一番好き嫌いがハッキリ分かれるのがチギモだそう。
稀少部位のガリの天ぷら
▲店内のメニューボードを見ると、なんとレアメニューのガリの天ぷら(120円)が! ガリは、生姜のガリではなく、牛の気管にあたる希少部位だ
▲ガリの天ぷらは、変わった形をしている
▲ガリもまな板の上にセットして、トングで押さえ込んで、ハサミで一刀両断!
▲ハサミを持つその手に、固い手応えを感じる
▲やや丸っこいので、ハサミで切るのは少しコツが必要だ
▲ガリの断面。色は白だが、少し複雑な形状で、独特な雰囲気がある
▲ガリも、しっかりと酢醤油と粉唐辛子に浸す
ガリを食べてみると、鶏の軟骨のようなコリコリとした歯応えのある食感が面白く印象的だった。
あきちゃんのホルモン天ぷらは揚げたてなので、どれも衣がサクサクで香ばしい。そして、酢醤油をつけるので意外と脂っこくなく、サッパリと食べられた。
あと、ホルモン天ぷらにハサミを入れたときの手応えが、部位によって全然違うのも楽しい。
▲なお、あきちゃんでは野菜の天ぷらもある
ホルモンだけでは飽きるかもしれないので、ぜひ合わせて注文してみてほしい。
「でんがく汁」も食すべし
髙橋さん:ぜひ「でんがく汁」も食べてみてください!
でんがく汁(430円)とは、ホルモンをダシに使い、ホルモンが具材として入っているスープのこと。
▲透明感のあるスープで、見た感じはアッサリしていそう
▲塩ベースで、ほんのりと柚子の風味がする
具材に細かく刻まれたホルモンが入る。使われているのは、ビチ・千枚(センマイ)・ハチノス・オオビャク・フワ(肺)。
▲ビチ
▲千枚(センマイ)
▲ハチノス
▲オオビャク
▲フワ
▲お好みで、粉唐辛子を入れるのもおすすめ
でんがく汁は、ホルモンのうまみが広がるアッサリとした味わいで、天ぷらを食べたあとにちょうどいい。ダシにも具にもホルモンを使った、ホルモンづくしの汁もの。
なお、でんがく汁をベースにした「でんがくラーメン」「でんがくうどん」「でんがくにゅうめん」も評判のメニューだ。
名物「せんじがら」とは?
広島市内の福島町界隈のホルモン天ぷらのお店では、ホルモン天ぷらとともに「せんじがら」というものも売っていることが多い。
「せんじ揚げ」「せんじ肉」とも呼ばれるせんじがらとは、おもに豚の胃袋を煎じて(煮て)揚げたもの。鶏や馬の肉を使ったせんじがらもあるという。
▲あきちゃんでも、せんじがらを扱っている
基本的に、せんじがらはテイクアウトメニューだ。
▲あきちゃんでは、袋入りで販売(700円)
テイクアウトメニューだが、店内で袋を開けて食べることもできる。
▲せんじがらの見た目は、まるで干しシイタケのようだ
▲せんじがらのひとかけらはけっこう大きく、塩で味付けされている
かなり固く噛み応えのある食感だ。モグモグと噛み締めていると、だんだんとうまみが広がってくる。
▲食べやすい大きさにカットして食べるのがいい
髙橋さん:ウチのお店では、豚の胃のせんじがらのほかに、馬の赤肉のせんじがらもあります!
残念ながら、取材時は馬の赤肉のせんじがらは売り切れだった。ぜひ一度、馬のせんじがらも食べてみたい。
コンビニでも入手可能
実は、せんじがらも広島市内の福島町界隈が発祥といわれている。ホルモン天ぷら同様に、食肉施設があったため生まれたものだ。
ごく限られたエリアに根付いているホルモン天ぷらと違い、せんじがらは広島市やその周辺でも食べられており、広島の名物としても認知されている。
実際に、広島市周辺のコンビニエンスストアーやスーパーマーケット、高速道路のサービスエリアなどでは、スナックやお酒のおつまみのような感覚でせんじがら、あるいはせんじ肉(下写真)という商品名で販売されている。関東や関西の一部コンビニでも入手可能だ。
▲右上から反時計回りに「ホルモン揚げ せんじ肉」(小サイズ、110円)、「ホルモン揚げ せんじ肉にんにく風味」(以下すべて300円)、「ホルモン揚げ せんじ肉豚ハラミ黒胡椒」、「ホルモン揚げ スパイシーせんじ肉」、「ホルモン揚げ せんじ肉」「ホルモン揚げ せんじ肉砂ずり」。すべて参考価格、税別、大黒屋食品株式会社より発売中
▲市販のせんじがらは、あきちゃんで売られていたものよりも小さいサイズにカットされている
▲鶏の砂ズリのせんじがら
▲豚ハラミのせんじがらもある
ちなみに、東京の銀座にある広島県のアンテナショップ「TAU(タウ)」では、市販のせんじがらを買うことができる。
あきちゃんで超ローカルグルメ・ホルモン天ぷらをぜひ食べてみて!
広島でもごく限られた地域でしか根付いていない、まさに「超ローカル」なグルメ、ホルモン天ぷら。なぜホルモン天ぷらが超ローカルなグルメになったのかは、資料もないため、お店でも理由はわからなかった。
しかし、この超ローカルなエリアに、ホルモン天ぷらを求めて全国からお客さんが来るという。実際、取材中にもホルモン天ぷらを食べるためだけに、はるばる鹿児島から来たというお客さんもいた。そんな遠方からのお客さんにも、明るく気軽に接するあきちゃんのスタッフも印象的だった。
超ローカルな食べ物なので、興味があっても少し訪れにくい印象があるかもしれない。
しかし、あきちゃんでは気軽にホルモン天ぷらが楽しめる雰囲気なのが魅力だ。
揚げたてサクサクのホルモン天ぷらを、ぜひ楽しんでほしい。
お店情報
あきちゃん
住所:広島県広島市西区福島町1-15-5
電話番号:082-296-2821
営業時間:11:00~14:00、17:00~21:00
定休日:木曜日
"揚げた" - Google ニュース
January 23, 2020 at 04:30AM
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ホルモン→揚げる→天ぷら→自分でチョキチョキ→楽し!→食べる→美味し! - メシ通
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