Friday, May 22, 2020

インドネシアでタブー犯した記者逮捕、その裏に何が - JBpress

誤って触れると抗争や暴動も、知られざるインドネシアの社会構造

2016年には、キリスト教徒でもあるジャカルタ州の知事がイスラム教の聖典コーランを冒涜したとして、知事の即時辞任を求め、イスラム教徒による大規模な抗議活動が起こった(写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚智彦)

 インドネシアのカリマンタン島南カリマンタン州コタバル市で5月4日、地元メディアに記事を執筆した記者ディアナンタ・プトラ・スメディ氏が地元警察に逮捕された。

 逮捕容疑は電子情報商取引法(ITE)違反で、「国民に対して民族間の嫌悪や差別を煽り、社会を不安定化させる可能性がある」というものだが、この逮捕容疑の裏にはインドネシア特有の報道に関するタブー(禁忌)があった。

記事公開から半年後に突然の逮捕

 南カリマンタン州の南東部に浮かぶ島コタバル県の中心都市コタバルの記者・ディアナンタ氏は、5月4日、突然コタバル警察に逮捕された。5月16日の主要紙「テンポ」(電子版)などの報道によると、ディアナンタ記者は2019年11月9日にインターネット上のウェブサイト「バンジャルヒット」に、地元の土地収用を巡るプランテーション会社と地域住民の対立を伝える記事を執筆、アップした。

 記事は「ジョリン・アグロ・ラヤ」(以下、ジョリン社)というプランテーション開発・運営会社が、地元民所有の土地を正規な方法ではなく収用した可能性を指摘した「盗まれた土地」との見出しの記事で、「この土地収用問題に地元ダヤック人が不満を抱き、南スマトラ州警察に訴えを起こそうとしている」という内容になっている。

 記事の中で問題にされたのが、地元の宗教関係者へのインタビューの中の「この土地を巡る争いは、ダヤック人とブギス人との紛争の引き金となるだろう」という引用部分だった。これがダヤック人とブギス人との民族間対立を煽り、紛争に発展する可能性がある、と判断されたのだ。

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