“掃除機あるある”ナンバーワンといったら何だろう? おそらく誰しもが声にするのは「ヘッドのブラシに絡まった髪の毛やペットの毛」だ。
ある人はあきらめ、ブラシがタダの棒と化すほど髪の毛が絡まった状態まで放置。またある人は、ハサミやカッター、リッパーなどを使い、チマチマと切り汚いものをつまむようにゴミ箱へ捨てているのではないだろうか?
しかし先日発売されたばかりの、パナソニックの「パワーコードレス MC-SBU840K/MC-SBU640K」は、髪の毛が絡まない。ペットの毛も絡まない。「毛がからみづらい」と謳っている掃除機は数あれど、「からまない」と言い切るのがパナソニック。価格はオープンプライスで、実売価格は、それぞれ90,000円前後/75,000円前後。
筆者はさらに「絶対」と付け加えたい。1カ月ずっと使っているが、なんとペットの毛も髪の毛も1本も絡んだことがないのだ!
ここ10年の掃除機の革命といえば、サイクロン掃除機の登場ぐらい。各メーカーは軽さやパワー、駆動時間を競っていたものの技術革新はなかった。しかしパワーコードレスは、掃除機に「革命を起こした」1台だ。
とにかく髪の毛やペットの毛が絡まないのに仰天する!
性能をうんぬん語るより、ムービーを見てもらえばこの掃除機が一発で欲しくなる(笑)。とくにペットと一緒に暮らしている方や、女系家族が多い家庭であれば。どちらにしても、普通の掃除機なら髪の毛やペットの毛が、ヘッドのブラシに絡みついてスゴいことになる。1週間もお手入れしなければ、ブラシは毛でがんじがらめになり、ブラシではなくタダの棒になってしまう。
パワーコードレスであれば、ペットの毛も、長い髪の毛に見たてた糸も、まったくブラシに絡むことなく、面白いようにダストカップに吸い込まれていく。さらに驚くべきことに、ヘッドを支える小さなローラーにもあまり毛が絡まない。こちらは「まったく」というほどではないが、明らかに他の掃除機より絡みづらくなっている。
これまでも「毛がからみづらい」という掃除機は数多くあった。筆者もペットのブリーダーさん向けの勉強会などで、毛が絡みづらいとして、ある他社の掃除機をオススメしていた。しかしパワーコードレスはそれを過去のものにしてしまったのだ。これほど毛が絡まないスティック掃除機は世界にない。
刮目せよ! メチャメチャ工夫されている「からまない」仕組み
ここからは、本当に毛が絡まないのか? と、にわかに信じられない方への説明だ。何しろヘッド周りの技術革新は、ブラシが付いてから53年ぶりになるのだ。
主にエンジニア系向けなので、「結果が分かれば、それでよし! 」という方は、次の節まで読み飛ばしてもらって構わない。
仕組み自体はものすごく簡単。実用新案ではなく特許申請できる、身近な物理の法則を使ったもの。まずスロー映像を見てほしい。
見てわかるのは、ブラシの形状だ。通常は1本の円柱にブラシがついている。しかしパワーコードレスは、先が細くなった円錐型のブラシが2本ついている。さらにそれぞれのブラシが左右独立して、中央部は完全に切り離されている。
こうすることで、ブラシに絡んだ髪の毛やペットの毛は、ブラシが回転すると、どんどん細い先端部に寄せ集められ、最後は2本のブラシの隙間から、吸引口に吸い込まれるようになっている。言われてみれば超簡単なしくみだが、53年間誰も思いつかなかったアイディアだ。
しかしアイディアだけでは製品にできないのが家電の難しいところ。先の写真を見るとヘッドの先端に、円錐のフチが当たるようになっている。それだけでなく円錐のフチは床面に対しても全面が当たっている。
そのため円錐の根元は、左右両端に上下左右に傾いて支持されている。これだけ大きな円錐のブラシを左右2cm程度のモーター部分で片支持しているのだ。フローリングならいいが、毛足の長いラグやじゅうたんも掃除するので、それぞれのブラシには相当の負荷がかかる。そのため、ブラシの中には軸ぶれしないように金属製のシャフトが埋め込まれているのだ。
さらに、ブラシを斜めに支持しなけらばならない。これまた設計が難しい上に、今まで以上に太いブラシなので負荷も大きく、根元で支持する強度も求められるのだ。何年か使っても壊れない、多少の衝撃でも壊れない製品にするには、「円錐ブラシだ! 」というアイディアだけでは製品化できないのだ。
また、毛を中央に寄せるには、もうひとつ大事な機構が必要。それがヘッドカバーについているテフロンテープ(パソコンのマウスの裏についている滑るシール)だ。床面とブラシの間にペットの毛や髪の毛が引っ張られ、徐々に中央に寄っていくが、スベリが良すぎると中央に寄らない場合がある。このテフロンテープは、これらを確実に中央に集めるためにアシストしているのだ。しかもグレーのテフロンテープが見えるとデザイン的にダサイのか、わざわざこれを隠すように黒いテープで隠している(笑)
掃除機に詳しい方は、「普通のブラシはフローリング用とカーペット用など何種類もの毛を植毛しているのに、パナソニックは1つだけ」と思われるだろう。実はこれにも理由がある。一般的なブラシは、フローリング用の柔らかいブラシを多めに植毛、ラグ用の固めのブラシを少なく植毛している。なかにはこれに、毛ゴミ用のゴムを入れたり、静電気防止用に銀の糸を入れたりと色々趣向を凝らしている。
ここで問題になるのは、ラグ用の固めのブラシ。植毛が少ないのでブラシのすき間に毛を巻き込んでしまいがちなのだ。簡単に言うとクシのような役割をしてしまい毛をどんどん巻き込む。
パナソニックの「からまないブラシ」は、色が同じブラシなので1種類の毛にしか見えないが、注意してブラシに触れてみると、ラグ用の固めのブラシを柔らかいフローリング用のブラシでサンドイッチしているのだ。しかも植毛の量のエラく多いのが分かるだろう。
こうすると硬い毛の間に毛が入り込まなくなる。しかも植毛の量が多いので、ペットの毛や髪の毛はブラシの奥に食い込まず、常に表面に張り付いている状態になるのだ。
そこですかさず、表面の毛をテフロンテープで押さえてやると、あれよあれよとブラシの表面を毛が移動していくというわけだ。しかも、パナソニック以外のブラシは斜めに植毛されているが、パナソニックはV字に植毛してあるので、ヘッドの端で捕らえたゴミを吸い込み口の中央に集める。コレ、実はパナソニックの特許。
次に、新しい「からまないブラシ」を見てみると、円錐形を斜めに取り付けたので、結果的にV字植毛と同じ効果を得られるのだ。スゲー!
円錐型のブラシなので、吸い込み中央部分はそのままにしておくと大きな空間ができてしまい、空気の流れが遅くなり真空度も悪くなる。そこで、ヘッド裏面の中央に凸部を作り、ヘッド上部には凹みを作ることで、しっかりゴミが吸い取れるように気流と気圧の調整もしているのだ。カバー中央部はブラシとブラシのすき間ができてしまうので、これを補うようにV字の羽を設けて、中央のゴミも取り逃さないように工夫されている。
このようにアイディアとエンジニアリングと工夫がめちゃくちゃ盛り込まれたのが「からまないブラシ」なのだ。
ブラシ用のモーターが2個に増えたこと、ブラシの直径が太くなり負荷が高くなったこと、さらにブラシを一定の力で押さえ糸ゴミを中央へ手繰り寄せる機能が増えたことで、以前のパワーコードレスに比べ若干運転時間が短くなっているのは、この際仕方ないというのがエンジニア視線の筆者の考え。むしろ数分しか短くならなかったのが不思議なぐらいだ。
以前のパワーコードレス用に「からまないブラシ」のみを販売して欲しいという声も多数あるだろう。しかしヘッドに回す電流が増えているので、残念ながら以前のモデルでは利用できない(互換性はない)。
革命的なパワーコードレス! ペットオーナーのみなさん買い替えを!
その吸い込むパワーゆえ、少し重いというデメリットがあるものの、それ以上にペットの毛や髪の毛が絡まないというメリットの方が大きい。それが革命児! パナソニックの新しいパワーコードレス。
この掃除機は、こんな人たちにオススメしたい! いや買い替えを強く推奨したい!
- ペットと一緒に暮らすご家庭に
- 女性の多いご家庭や女性の一人暮らしに
- 女子寮や女子更衣室に備えの掃除機として
- ペットショップやアパレル製造の現場の掃除機として
- ほうき&ちり取りを使う理髪店、美容室の掃除機として
今回発表されたのは、バッテリー駆動のスティック掃除機だが、順次紙パックやサイクロンにも「からまないブラシ」を搭載予定だ。
業務用として使いたいのでバッテリー式よりコンセント式にしたい! という方には、人気殺到するかもしれないので、今から予約することをオススメする。マジで。
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August 07, 2020 at 06:00AM
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