ペットと死別し、喪失感から心に深い傷を負う「ペットロス」を癒やすため、滋賀県草津市の羊毛フェルト作家の女性が、生前の犬や猫そっくりの人形作りを元飼い主らに教える取り組みを続けている。写真や絵画と違い、抱き寄せたり肌に触れられたりすることが好評といい、女性は受講者に寄り添いながら技術を伝えている。 【写真】亡き愛猫の人形を手のひらに 「とあるneco(ねこ)」の作家名で活動する常楽さとみさん(44)=野路1丁目。人形作りは市内の西方寺や守山市、京都市の計3教室で指導しており、現在は約15人が学ぶ。 人形は針金で骨格を作り、毛糸で肉付けして、その上から羊毛フェルトを乗せる。成形や植毛、ニス塗りなどの工程を重ね、本物のような質感を出していく。20センチのサイズを仕上げるのに初心者で数カ月かかるという。 西方寺本堂で今月中旬あった講習会には女性5人が参加した。6月にトイプードル=当時15歳=を亡くした草津市の女性(54)は独学で自作もしたが、より似せた愛犬の人形を作りたいと受講した。「今も悲しみが癒えず苦しいが、気が紛れる。絵や写真と違い、触ることができるので心が慰められる」と話す。また、日本舞踊を教える大津市の女性は「亡くなってからでは悲しすぎてできない」と3歳になるトイプードルの人形を作っている。 常楽さんは「ペットを自分で作ることは立ち直るきっかけや供養にもなる。教室で同じ境遇の仲間ができることも支えになるのでは」と話す。受講は1回3千円。問い合わせはメールrumorumo0710@gmail.com
■「同じように心を痛める人の支えになりたい」 常楽さん自身も18年間ともに過ごしたペルシャ猫「ルディ」との別れを3年前に経験し、ペットロスに陥った。深い闇に落ちた心を救ってくれたのは人形作りとの出会いだった。 アパレルの仕事をしていた23歳のころ、友人から生後間もない子猫を譲り受けた。結婚、出産、子育てと人生の節目を共に過ごした相棒だったが、血尿をきっかけに末期の肺がんを患っていることが判明。高齢で手術もできなかった。病院でいかせるのはつらく、自宅でみとった。 「なぜ、肺がんに気づけなかったのか、設備の整った病院でみとるべきではなかったか」。深い後悔に襲われ、自分を責めた。食欲がなくなり、不眠になった。何もしていないのに涙がほおをつたった。失意の中、写真から人形をつくるサービスをインターネットで見つけ、迷わず注文。届いた箱を開封して中身を確認すると「帰ってきてくれた」と人形を抱きしめ、思わず号泣した。 「同じように心を痛める人の支えになりたい」と人形作りの指導者を目指し、京都市内の教室で講習を受け、技術を習得後に昨年1月独立した。現在は各教室で指導の傍ら、依頼に応じてオーダーメードの人形も作る。依頼者の心情をくみ取る手仕事は好評で、予約は来年12月まで埋まっている。「一匹一匹と丁寧に向き合う作家でありたい」と話す。
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December 06, 2021 at 09:01AM
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