近隣トラブルが起きやすいのが悩みの種
マンションなど集合住宅は、一戸建て住宅に比べ除雪や清掃の労力の少なさやセキュリティー面などでメリットがある反面、上下左右に他人が住んでいるため、近隣トラブルが起きやすいのが悩みの種。今回は、集合住宅に多いペットのトラブルについて、札幌弁護士会の高橋健太弁護士に聞きました。(報道センター 小林基秀)
まず管理会社、管理組合に報告
――ペットのトラブルは、どのような相談が多いですか
ペットの鳴き声を含めた音や、排泄物など臭いに関する相談が多いです。ペット禁止建物なのに、飼っている人がいて困っているといった相談もあります。
――ペット飼育禁止の集合住宅でペットを飼っていることが判明したら、どのような対処方法がありますか。退去命令は出せるのですか。
ペットを飼っていることが確認できれば、賃貸であれば管理会社または大家に、分譲であれば管理組合に報告すると良いでしょう。飼っている本人に入居者が直接言うと、かえってこじれることもあります。言い合いになり、最悪どちらかが手を出して事件になってしまうかもしれません。被害を受けたとしても、入居者同士が「出て行け」という権利は持っていません。
――では被害を受けた入居者ができることは何ですか。
ペットの騒音や臭いに対する慰謝料や、ペットに物を汚された場合はクリーニング費用や買い替え費用などの損害賠償請求です。管理会社または大家、管理組合に報告した後、通常は、飼い主にペットを手放すよう何らかの勧告があると思います。それでも従わない場合には、退去勧告(命令)がされる場合もあると思います。
もっとも、管理会社または大家、管理組合であっても、強制的に退去させることはできません。退去させたい場合には、訴訟をして強制執行など法的手段をとる必要があります。つまり、管理会社や大家、管理組合側が飼い主の自宅の鍵を勝手に変えたり、物を撤去したりすることはできません。それをしてしまうと、逆に飼い主から損害賠償請求をされる可能性があります。
管理会社または大家、管理組合に対応してもらえない場合には、一入居者として、退去までさせることは難しいと思います。もっとも、この場合も、損害賠償請求であれば、できる可能性があります。
――被害を受けている入居者は加害者に対して損害賠償請求以外にできることはないのでしょうか。
あり得るとすれば、行為の差し止めでしょうか。例えばあまりに大きな騒音を出す行為、ペット禁止のマンションで飼っている行為をするなという、行為の差し止め訴訟です。規模は違いますが、知名度の高いと思われる例を出せば原発再稼働の差し止め訴訟と同じ理屈です。ただ、損害賠償請求よりもハードルは高く、認められる要件も厳しいです。
――裁判に勝ち、損害賠償のお金も得たけど、相手はなお騒音を出すことをやめない場合、どうすればいいのですか。
再び損害賠償請求の訴訟をすることも考えられますし、あまりにひどい場合は、先の差し止め訴訟を起こすことも選択肢です。
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