Sunday, March 15, 2020

ネット獣医や愛犬用代替肉 ペット市場にテック革命 - 日本経済新聞

CBINSIGHTS

 あらゆるモノがネットにつながる「IoT」などの技術をペットの暮らしに活用する「ペットテック」が注目されている。ペットの活動を飼い主に配信する首輪型端末や、離れた場所からエサの量を調整できる自動給餌器、獣医と飼い主がペットの健康状態を共有し治療プランを提供するソフトウエアなど多様なサービスが登場している。「ペットも家族の一員」という意識が当たり前になり、そこに商機を見いだそうとする海外スタートアップ約75社を紹介する。

ペットケア業界がブームに沸いている。ペットフードの売上高は2010年比で61%増え、年間1000億ドルに迫っている。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ライフステージ(家の購入や子供の誕生など)が後ろにずれ、高級品の消費が急増していることがブームの一因だ。米国では18歳未満の子供を持つ夫婦の割合が1970年の57%から19年には38%に下がった。一方、今や米世帯の3分の2がペットを飼っている。

ペットを飼っている人が最も多い「ミレニアル世代(81~96年生まれ)」も良質な製品は高くても買う姿勢を示し、3分の2がペットを家族の一員と考えている。

ペットケア業界で勢いがあるのはペットフードだけではない。動物病院やペット保険などペット向けサービスを提供するスタートアップや、遠隔モニタリングカメラなどIoT機器を手がけるスタートアップなども伸びている。

今回のリポートでは、CBインサイツのデータに基づいてこの商機をつかもうとしているスタートアップ75社余りを特定し、サービス、食品、小物・周辺商品などのカテゴリー別に分類した。

業界地図は未上場の存続企業だけで構成されており、この分野を網羅しているわけではない。企業は資金調達活動などに基づいて選ばれた。カテゴリーには漏れもあり、各社は主な事業に基づいて分類されている。

ペットケアを変えるスタートアップ約75社

ペットケアを変えるスタートアップ約75社

■主なポイント

資金調達額が最も多いのはサービスを手がけるビジネスモデル:ペットケアの質を高め、アクセスを改善するサービスを提供する企業(デジタル獣医サービスやペットシッターのマッチングサイトなど)の平均調達額は5000万ドル近くに上る。一方、ペットフードや小物・周辺商品を販売するスタートアップは1300万ドルにとどまる。

ペットの健康トレンドは人間とほぼ同じ:ペット関連スタートアップは体に良い食材から健康関連のウエアラブル端末に至るまで、人間の間でも流行している健康トレンドに力を入れている。

サステナビリティー(持続可能性)がペットフードのトレンドを席巻:動物由来の食材や成分を使わない「ミートレス」ペットフードは、肉のような見た目を再現するなど人間向けほど多くの商品特性を競わないため、素早く市場に投入できる。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)が投資:米マースは19年、ミートレスのドッグフードから動物病院に至るまでペットケアの様々な分野に投資した。他のCVCも続く可能性がある。

■カテゴリー別の分類

<ペットサービス>

犬の散歩代行・ペット預かり:この分野のスタートアップは飼い主と散歩代行者やペットシッターをマッチングするサイトを築いている。犬の散歩代行者のマッチングアプリを運営する米ワグ(Wag!)は全てのカテゴリーで最も調達額の多いスタートアップだが、同じサービスを手がける他のスタートアップも伸びている。米ローバー(Rover)は散歩代行に加え、ペットとの留守番やデイケア、長期預かりサービスの提供者を見つけるサービスを提供する。同社の調達額は公表ベースで3億ドルを超えている。

動物クリニック・病院:このカテゴリーの企業は動物病院など医療サービスを提供している。例えば、米メドベト(MedVet)は予防ケアから手術、リハビリに至るまで様々なサービスを提供する動物病院チェーンを保有する。中国の動物病院チェーンの瑞派寵物医院(Ringpai)は最近、シリーズCのラウンドでマースペットケア・ベンチャーズなどの投資家から資金を調達し、企業価値が10億ドル近くに達した。

顧客中心のサブスクリプション(定額課金)ベースの医療モデルを構築しているスタートアップもある。米ファジー・ペット・ヘルス(Fuzzy Pet Health)は個別の健康プランやメールによるオンデマンドの獣医紹介サービス、在宅ケアを提供する遠隔診療の動物医療スタートアップだ。シードステージの米スモールドア(Small Door)は診療記録に簡単にアクセスできるようにし、価格を透明化し、年中無休の医療相談を提供するなど獣医ケアをシンプルにした会員制サービスを手がける。

金融・保険:このカテゴリーにはペット保険を提供する米フィーゴ(Figo)や米ワグモ(Wagmo)などがある。フィーゴは定期健診や外科手術などの獣医サービスを補償し、ワグモは免責なしの定期健診用の会員制保険を提供する。診療代の分割払いサービスを提供する米スクラッチペイ(Scratchpay)などもこのカテゴリーに含まれる。

:このカテゴリーには獣医や飼い主による処方箋の運用を支援し、アウトカム(臨床成果)の向上を支えるツールを提供する企業が含まれる。例えば、米ベットソース(Vetsource)は獣医による処方箋の作成、確認、承認を支援するデジタルツールを手がける。マースペットケアが出資する米ミックスラボ(Mixlab)は獣医と協力してペットの処方箋をカスタマイズする。

獣医向けソフトウエア:このカテゴリーの企業は獣医の仕事を管理し、治療プランを知らせるソフトウエアを開発している。米バベルバーク(BabelBark)はペットに装着したウエアラブル機器からデータを収集し、飼い主と獣医の双方にペットの健康状態の全体像を提供するソフトウエアを開発している。同社のプラットフォームはペットに応じて健康に役立つ可能性がある製品やサービスをオススメする予測分析も手がける。

<高級ペットフード・おやつ>

このカテゴリーの企業は天然成分100%の高級ペットフードやおやつを手がけている。米アイ・アンド・ラブ・アンド・ユー(I and love and you)は自社サイトや米アマゾン・ドット・コム、米ペットスマート傘下のネット通販チューイー、米ターゲットなど大手のペット専門店や量販店で犬や猫向けの食品やおやつを販売している。このカテゴリーの他の注目分野は以下の通りだ。

人間の食事と同じ品質のペットフード:米ザ・ファーマーズ・ドッグ(The Farmer's Dog)や米ジ・オネスト・キッチン(The Honest Kitchen)などは人間の消費にも適した原材料を使ったペットフードを販売している。米オリー(Ollie)や米ペットプレート(Pet Plate)など人間向けと同じ品質のペットフードを販売している多くのスタートアップは、ペットの年齢や品種、活動レベルに応じてカスタマイズされた食事も提供している。

ミートレス:この分野の企業はペットフードに動物由来のタンパク質の代替品を使うことで、ペットフードの生産による環境への影響を抑制しようとしている。マースペットケアが出資する米ワイルドアース(Wild Earth)は、肉の代わりにビーガン(完全菜食主義)の麹ベースのタンパク質を使うことで、環境負荷を減らそうとしている。一方、独テネトリオ(TeneTrio)とカナダのワイルド・ハリアー(Wild Harrier)は虫を原材料にしたドッグフードやおやつを手がける。米ボンド・ペット・フーズ(Bond Pet Foods)は遺伝子組み換えイースト菌を使って培養した動物性タンパク質を開発している。

<電子商取引(EC)>

米ペットフロー(PetFlow)などの企業はペットフードやおやつ、おもちゃ、その他の小物・周辺商品など様々なブランドのペット製品を販売するサイトを運営している。犬用のおもちゃやおやつが毎月届くサービスが注目を集めている米バークボックス(BarkBox)もこのカテゴリーに含まれる。

<ペット用の小物・周辺商品>

ウエアラブル端末:米ファイ(Fi)や米ファインドスター(Findster)などは、飼い主がスマートフォンでペットの位置と活動レベルを追跡できる首輪を販売している。英フェルカナ(Felcana)などは健康管理アプリ付きのウエアラブル端末を開発している。フェルカナの首輪は活動パターンを追跡し、この情報をアプリに送ることで、このデータに基づいて潜在的な健康問題を予測できる。

IoTカメラ:米ファーボ(Furbo)、米ペットチャッツ(PetChatz)、米ペットキューブ(Petcube)などは飼い主が離れた場所にいてもペットを観察したり、やり取りしたりできるネットにつながったカメラを開発している。

給餌器:米オビ(Obe)や米ペットネット(Petnet)などは、餌の量を調整したり、消費パターンを追跡したりする機能によって離れた場所からでも餌をやることができるスマート給餌器を手がけている。

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March 16, 2020
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