総社市が西日本豪雨の際、自治体主導で初のペット避難所
2018年7月の西日本豪雨から約1カ月後、51人の死者を出した岡山県倉敷市真備町は民家の前に大量のがれきが積み上げられ、1階部分に泥水に沈んだ跡がくっきりと残っていた。堤防の決壊で市街地の大半が浸水したため、住民の姿はほとんど見えない。まだ避難所生活を強いられていたからだ。住民は倉敷市だけでなく、高梁川を挟んで対岸の岡山県総社市にも多数避難した。そんな中、総社市中央の総社市役所西庁舎では自治体主導としては全国初のペット同伴避難所が開設された。
最大で20世帯以上、20数頭の犬猫が飼い主とともに避難生活を送ったが、水害でわが家を追われた真備町の住民が大半を占めた。真備町から避難した女性によると、そばに飼い主がいて安心したのか、犬や猫がほえたり騒いだりすることがなく、避難生活はスムーズに進んだという。
しかし、真備町では自宅に取り残され、厳しい暑さで衰弱した犬の姿も見られた。この女性は「私は愛犬といっしょに避難できたが、同行避難をあきらめざるを得なかった飼い主を思うとつらい」と涙をにじませていた。
総社市では当初、総社市三輪の市スポーツセンターでペットも受け入れていた。しかし、スポットクーラーの使用でブレーカーが落ちるトラブルが相次ぎ、片岡聡一市長の判断で同伴避難所を設置した。ペットは家族という飼い主の思いを受け止め、ペットをケージに入れて飼い主のそばに置くことにしたわけだ。
総社市危機管理室は「猛暑の中、ペットを外に置くのは好ましくなかった。スムーズに避難所を運営できたのは良かった」と振り返る。
総社市が真備町の住民を受け入れているのを受け、倉敷市も7月下旬になって倉敷市玉島陶の穂井田小学校に同伴避難所を設けた。倉敷市防災危機管理室は「ペットと車中泊している住民もいた。体力の限界を迎える前に受け入れたかった」と説明するが、飼い主らから相次いで不満の声が寄せられていた。
ペット受け入れのマニュアル作成、自治体の反応鈍く
環境省によると、2011年の東日本大震災では福島県で約2500頭、岩手県で約600頭の犬が死んだと報告されている。福島原発事故の避難区域に置き去りにされて野生化したペットの姿に悲しみ、ペットの受け入れを拒む避難所のあり方を問題視する声が上がった。これを受け、環境省は2013年、ペット同行避難のガイドラインを作成するとともに、全国を8つのブロックに分けて同行避難の図上訓練を実施してきた。さらに、市区町村には避難所でのペット受け入れ方法を定めたマニュアルを作成するよう呼びかけている。
しかし、市町村で検討作業はそれほど進んでいない。西日本豪雨の被災地である岡山県でペット同行避難のマニュアルを作成したのは総社市だけ。27市町村中、ざっと半分は防災計画の中にもペット避難の記述がない。岡山県生活衛生課は「環境省や県のマニュアルを参考に市町村に続いてほしいのだが、動きが鈍い」と首をかしげる。
最近、大きな災害が発生していない富山県では、同行避難のマニュアルを策定した市町村はない。富山県生活衛生課は「検討を始めた市町村はあるようだが、まだ形になっていない。やらなければならないという気持ちはあるはずなのだが……」と話した。
市区町村の対応が遅れている原因としては、動物やペットに関する知識を持つ職員が少なく、人命優先でペットの避難まで手が回らないことが挙げられる。動物を扱う部署と災害に対応する部署の連携も不十分なままだ。
環境省動物愛護管理室は「市区町村の対応は遅れている。平素から対応を考えておかないと、災害時にスムーズな避難所運営は難しいことを理解してほしい」と呼びかけている。
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March 02, 2020 at 05:11AM
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