Wednesday, August 5, 2020

〈今も続く名店〉衣の軽さに技が光る、名人の揚げる「天ぷら」(食べログマガジン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

〈今も続く名店〉

都内で長年続く老舗を紹介する、「おいしい浮世絵展」とのコラボ企画。 「浮世絵」と「食」を掛け合わせたオリジナル展覧会「おいしい浮世絵展 ~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい~」は2020年7月15日(水)から9月13日(日)まで森アーツセンターギャラリーで開催。こちらの企画では、浮世絵に描かれた「そば」「天ぷら」「寿司」の名店をご紹介します。

「天ぷら」 てんぷら近藤

天ぷらの歴史は、江戸の屋台から始まりました。「江戸時代の後半に、搾油と製粉の技術が発達し、粉を水で溶いた衣をつけて揚げる天ぷらが生まれたのです」と話してくださるのは、天ぷらの名人として名高い近藤文夫さん。銀座「てんぷら近藤」のご主人といえば、ご存じの方も多いでしょう。

「江戸前」、すなわち江戸湾で水揚げされる海老、鱚(きす)、穴子、はぜ、めごち、ぎんぽう、貝柱……。今も昔も天ぷらの定番です。近藤さんがこの道に入った昭和の時代、天ぷらといえばこういった魚介類が当たり前でした。そんな中、精進揚げと呼ばれ、主に家庭で楽しまれた野菜を天だねとして取り入れ、それまでの食べ応えのあった厚い衣を薄くして軽快にし、新しい世界を開いたのが近藤さんです。 「当時、まだ20代、世の中の天ぷらを変えてやろうと考えていました」。素材に衣をつけて油で揚げるのは、江戸時代からの変わらぬ技ですが、この技を大きく進化させました。「海の環境も変わり、食材の味も変化している中、料理も進化しなければなりません。私は天ぷらを揚げ物ではなく、蒸し物と考えています」。油の熱を利用して、衣の水分で中の素材を蒸すので、「蒸し物」なのです。油の温度や揚げる時間などを素材によって調整し、海老の濃厚な旨みを、鱚からは淡い香りを、あるいはグリーンアスパラガスの青々しい風味を引き出します。 自然光の入る明るい店内での近藤さんの定位置は、カウンター内の美しく磨かれた揚げ鍋の前。お客様から見える場所に「本日の野菜」が盛られ、次々に揚げられていきます。江戸時代の天ぷらも、進化した現在の姿も、油と素材を繰る職人の技あってこそ。その豊かな味わいは、いつの時代も人々を喜ばせています。 常に満席の超人気店。お茶の水「山の上ホテル」で料理長として活躍後、1991年に銀座で独立。池波正太郎や土門拳に可愛がられ、影響を受けたそうです。

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