Monday, September 7, 2020

イエローストーンで魚が大量死の謎 - Newsweekjapan

<寄生虫が媒介するウイルスによる病死と見られるが、この病気は15度以上の水温が続いた時しか表れない>

アメリカ西部イエローストーン国立公園の北を流れるイエローストーン川で、数百匹もの魚の死骸が発見され、調査が開始された。

モンタナフィッシュ・ワイルドライフ&パークス(FWP)によれば、約200匹の魚の死因はまだ確認されていないが、水中の寄生虫によって引き起こされる増殖性腎臓病(PKD)の結果と考えられている。

魚の大量死は8月末から報告され始めた。それ以降、生物学者らは状況を評価するために川のさまざまな流域を調査してきた。そしてワイオミング州、モンタナ州、ノースダコタ州を流れる約1100キロの川の一部流域でマウンテン・ホワイトフィッシュの死骸が発見された。

リビングストンの下流約15キロにわたる流域では149匹、ビッグ・ティンバーの上流15キロあまりの流域では7匹の死骸が見つかり、さらにリビングストンの上流32キロに及ぶ流域で38匹の死骸が発見された,.

FWPは、他の機関と協力して、PKDが死因であるかどうかを確認するために試験用のサンプルを研究所に提出した。

この病気はマスにも感染することが知られているが、イエローストーン川でマスに病気が流行している証拠は見当たらない。

FWPは川の状態を監視する予定だが、現在のところ川への立ち入り禁止や制限といった措置はとっていない。

なぜここで寄生虫が増殖するのか

イエローストーン川でのPKDの流行は、近年数回にわたって報告されている。この病気は腎臓の重い炎症と貧血を特徴としている。国立公園局によれば、こうした症状が発生するのは通常、長期にわたって水温が摂氏15度を超えた後だけだ。

2016年にはイエローストーン川で大規模なPKDの流行が起き、何千匹ものマウンテン・ホワイトフィッシュが死亡した。この大量死は、モンタナ州エミグラントとスプリングデールの間で発生し、その結果、300キロあまりの流域が立ち入り禁止となった。

当時、この病気の原因となるウイルスを媒介する軟胞子虫という寄生虫は、イエローストーン川にはいないと考えられていた。だが魚の大量死をきっかけに、イエローストーン国立公園を流れる川の上流にこの寄生虫が生息しているのではないかという懸念が広まった。調査の結果、軟胞子虫が広く分布していることがわかった。

「多くの地域の河川は、水の状態から見て、2016年当時のイエローストーン川と同様かもっと悪い状態にあったが、PKDによる魚の死亡は報告されていない」と、国立公園局の報告書は述べている。「これらの結果は、水温の高さと流れの悪さという条件だけでは、PKDによる魚の死を説明できないことを示唆している。この予想外の魚の連続死は、PKDという病気の全容がまだ解明されていないことを示すものだ」

(翻訳:栗原紀子)

<参考記事>孤立した湖や池に魚はどうやって移動する? ようやくプロセスが明らかに
<参考記事>光を99%吸収 最も黒い深海魚が発見される

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