「動物病院で出された薬を与えた飼い犬が死んだ」「飼い猫が死んで動物病院に苦情を言ったが門前払いされた」――。全国でこうしたトラブルの相談が後を絶たない。ペットとの突然の別れの原因に医療行為が疑われる場合、飼い主はどうしたらいいのか。愛犬の死を巡って獣医師と訴訟で争った経験がある福岡市の女性(66)に話を聞いた。
待ち合わせた喫茶店に女性はたくさんの写真を持って来てくれた。飼っていたのはメスの秋田犬「こっちゃん」。写真の中で女性や夫に抱かれて幸せそうだ。「目がぱっちりして、性格はとっても穏やかでね」。しかし、夫婦とこっちゃんの日々は7年前、突然終わった。8歳だった2014年7月、救急動物病院に運び込まれ、子宮蓄のう症と判明して緊急手術を受けたが、手遅れだった。
子宮蓄のう症は、細菌により子宮にうみがたまる病気。早期発見で手術すれば助かるが、遅れれば命にかかわる。女性はこっちゃんの陰部に出血があるとかかりつけの動物病院で受診を繰り返したが、そうした診断を受けなかったという。死ぬ11日前も獣医師からは再び出血すれば来院するよう言われ、帰された。
こっちゃんが死んだ後、女性は獣医師への疑念が消えず、約3カ月後、意を決して動物病院を訪ねた。獣医師は初めこそ謝罪して金銭の支払いを申し出たが、後日撤回し、一切の責任を否定する弁護士名の書面が届いた。女性は怒りで手が震え、提訴を決意した。
獣医師に180万円の損害賠償を求めた訴訟で、獣医師側は「子宮蓄のう症を疑わせる事情はなかった」と全面的に争った。だが、福岡地裁は18年6月、獣医師が血液検査などで子宮蓄のう症でないかを確かめるべきだったなどとし、獣医師に約60万円の支払いを命じた。判決は確定した。
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女性の代理人を務めた武藤糾明(ただあき)弁護士によると、裁判所が認定する損害額は年々上がっているという。もともと法律上ペットはあくまで「物」であり、損害は時価相当額で評価される。ただ、家族同然に扱われるペットの存在感の高まりで飼い主の精神的苦痛が考慮されるようになり、数万円程度だった賠償額が近年は数十万円になることもあると明かした。大阪地裁では07年、死んだ愛犬の誤診を巡る訴訟で動物病院と50万円で和解した例がある。
子供がいなかった女性も訴訟では、こっちゃんを車に乗せて旅行に行くなど子供のように可愛がったことを写真とともに立証。その結果、判決は「小さくない精神的損害を被った」として約60万円のうち40万円が慰謝料として認定され、葬儀費用も算入された。
こっちゃんの死から7年たつが、女性は今も自宅でこっちゃんの写真の前に生花を供えている。「大変だったけど闘ってよかった。お金ではなく、けじめが付けられたから」。被告となった獣医師は今回取材に応じなかった。
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国民生活センターによると、「ペットサービス」に分類される相談は増加傾向にあり、11年度から10年間に受けた計6205件の相談のうち、ペット医療関連は約6割を占めるという。センターの担当者は「医療過誤を疑う相談であれば、法律相談などを利用するように勧めている」と話す。
17日には愛犬が死んだのは入院先の病院が漫然と放置したためだとして、名古屋市の飼い主が動物病院を相手取って約339万円の損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴した。ただ、訴訟となると時間や費用が飼い主の重い負担となり、武藤弁護士は「当事者同士で示談できた方が望ましい」と話す。そのうえで「日ごろからペットの体調変化や治療経過を日記などに記録しておくこと。そして、当事者同士で納得いかない場合は、獣医師にカルテを出してもらい、資料をそろえて弁護士に相談してほしい」と助言する。
獣医師側はどう考えているのか。福岡市で動物病院を営む獣医師の藤本愛彦(よしひこ)さん(51)は「ペットが家族として大事にされる傾向が強くなる中、獣医師と飼い主とのコミュニケーション不足がトラブルを招いている」と指摘する。獣医師は診断や治療について説明を尽くし、飼い主は疑問があれば遠慮せずに質問することが大事だといい「ペットにとって最善の対応となるよう獣医師と飼い主の双方でさらに理解を深める必要がある」と訴える。【平川昌範】
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September 18, 2021 at 04:23PM
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後を絶たないトラブル相談 ペットの医療過誤の疑い、どうする? - 毎日新聞 - 毎日新聞
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