
小さな体と愛らしい顔つきのハムスターは、人になれやすく比較的安価なことからペットとして人気だ。コロナ禍による自粛期間が続いた昨年は、一気に需要が高まった一方で生体の輸入がストップし、値上げに踏み切ったペットショップもあった。さらには感染した飼育者からの預け入れの問題や多頭飼育崩壊など、ハムスターはペットの中でもパンデミックの影響を色濃く受けたようだ。 「新型コロナの流行で、ハムスターの飼育に関する潜在的な問題が表面化したように思えます」。ハムスター専門の支援団体「ハムメディア」の代表・ナシオさんは語る。一人暮らしの感染者から入院中にハムスターを預かってほしいとの相談を受け、「ふたを開けてみればハムスターもコロナに感染、おまけに多頭飼育崩壊も起こっていました」。ハムスターは繁殖力が強く、数十日の妊娠期間で10匹ほど出産する。安易に同じケージで複数を飼育すると、あっという間に多頭飼育崩壊に陥ってしまう。 「SNSでのコミュニケーションが盛んになり、飼育環境改善の底上げにつながっています。しかし、ペット業者や小売店の知識、動物愛護法や行政の対応については、イヌやネコと比べてケアが足りないと感じます」。
新たにペットを飼う人増加
巣ごもり需要に伴い、2020年度に多くの人が新たにペットを迎え入れた。ペットフード協会(会長=児玉博充ユニ・チャーム顧問)の調査によると、イヌ・ネコの新規飼育者数はいずれも前年を1割超上回って伸長、過去5年間で最高の伸び率を示した。 ハムスターも同規模で新規飼育者が増加している。ペット用品メーカーのジェックス(大阪府東大阪市)マーケティング部の新藤健さんは「ハムスター用品市場は前年に比べ1割ほど拡大し、当社の出荷実績はそれ以上に伸長。(新規飼育者の増加は)巣ごもりの生活を充実させたいという思いや、特別定額給付金の影響があったのではないでしょうか」と話す。
環境を整えるには正しい知識必要
本来、野生のハムスターが生息しているのはアジアやヨーロッパの乾燥地帯。日本でハムスターが快適に暮らせる環境を整えるには、温・湿度管理を含め正しい知識が必要だ。 ほんの数十年前まで多用されていた金網製の飼育ケージは、現在では水槽やアクリル製のケージに置き換わっている。ハムメディアによると、金網ゲージを推奨する飼育書が「かなり減ってきた」と感じたのは2010年代になってから。金網をかむことでハムスターの歯を傷めるという知識が広まったからだ。 この流れの先駆けとなったのが、ジェックスが18年に発売したガラス製のオールクリアケージ「グラスハーモニー」だ。ケージの前面、側面、天面、背面全てがガラス製。同社がメインで手掛ける観賞魚用品の水槽を製造するノウハウを生かし、インドネシアの自社工場で生産している。 同社は冬場に使用する保温用ヒーターも自社設計し、電気関連の専門家の社員が品質管理に取り組む。新藤さんは「飼育者の先にいるハムスターのため、安全性を重視して設計、開発しています」と語る。 エサについても正しい理解が必要だ。ハムスターといえばヒマワリのタネを思い浮かべる人が多いかもしれないが、脂肪分が多く主食には適さない。イヌ・ネコが中心のペット用品メーカー、ドギーマンハヤシ(大阪市東成区)は、無添加のペット食品に注力。同社が8月に発売した「小動物の国産野菜 ソフトスティック にんじんと大麦若葉入り」は保存料、酸化防止剤を使わず、安心して与えられる。 営業本部ミニペット事業部の田邊博之部長は「当社における小動物の事業規模は2%ほどのイメージ。しかし小動物市場は非常に伸びており、今後拡大したいと考えています」と期待を込める。
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November 26, 2021 at 05:30PM
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