「コロナ禍で犬や猫を飼う人が増えている」
コロナ禍で人との接触が制限された2020年、人の心を癒してくれる存在としてペット需要の高まりが話題になった。
そうした中で、これまでも課題だったペットの健康に改めて注目が集まっている。ペットオーナーたちがペットの飼育方法について、必ずしも正しい情報を持っているとは限らないからだ。
「病気ではない状態=健康」ではない。
こう指摘するのは、犬と猫のヘルスカンパニーとして栄養学に基づいたプレミアムペットフード・療法食を展開するロイヤルカナン ジャポン 山本俊之社長だ。
犬と猫たちが、本当に健康な状態で幸せに暮らすためには何が必要なのか。そのポイントを聞いた。
ペットオーナーなら知っておきたい、犬や猫の“真の健康”
——2020年のコロナ禍でペット需要の高まりが注目されました。ペットを取り巻く環境は今、どのような状況なのでしょうか。
山本俊之社長(以下、山本) 一般社団法人ペットフード協会の調べによると犬や猫を新たに飼育し始めた世帯数、頭数は2020年に大きく伸びました。テレワークが普及し、人との交流が制限されるなかで、犬や猫に心の癒しを求める風潮が高まったのでしょう。
一方で「飼ってみたものの、ペットの飼育がこんなに大変だと思わなかった」「犬や猫がこんな行動をするとは思わなかった」などといった理由で、せっかく迎えた犬や猫を手放すペットオーナーも出てきています。
犬や猫を飼う前に正しい情報を持ち、犬と猫がいると自分たちの生活がどう変わるのかを理解してから迎え入れる必要性を改めて感じました。
ロイヤルカナン ジャポン 山本俊之社長
——まずはペットを迎え入れる段階での情報収集が足りていないのですね。
山本 新しくペットを迎え入れる前に下調べはしていると思うんです。でも、例えば犬種ごとの特性を理解し、どのような行動をする傾向があるかまでは調べていないかもしれません。また、ネット上には情報が溢れていて、何が正しい情報なのか分からなくなってしまっているかもしれません。
その結果として、せっかく迎え入れたペットを手放してしまう。あるいは、ペットを病気とまでは言わないものの、実は健康とは言えないままの状態にしてしまう。特にこの「“病気ではない=健康”ではない」という点は重要で、ペットオーナーの皆さんには、犬や猫の真の健康はどのような状態なのか、ぜひ知っていただきたいと考えています。
愛犬と愛猫を“真の健康”に導く5つのポイント
——犬や猫の真の健康とは、具体的にはどういうことなのでしょうか?
山本 真に健康な状態にある犬や猫は、見た目が違います。
毛ヅヤ・毛吹きが美しい被毛、素早い身のこなし、輝くような目と凛とした表情など、一頭一頭に備わった犬・猫本来の素晴らしさが引き出された状態を指しています。病気になっていないだけで健康と考えてしまう方もいるのですが、そうではないということを知ってほしいですね。
——ペットオーナーは、犬と猫を真の健康に導くために何をすればよいのでしょうか。
山本 ポイントは5つあります。
1つ目は、犬や猫は人間ではないと理解することです。当たり前のように思われるかもしれませんが、意外と理解されていないケースが多いんです。例えば、人間の食べ物が犬や猫には有害であるケースもあります。人とは異なる習性や文化を持つ生き物だと理解したうえで、接していくことが大切です。
2つ目は、同じ犬や猫でも品種・年齢・身体のサイズ・ライフスタイル・健康状態によって必要な栄養ニーズが変わるということ。しっかりと自分の犬・猫の栄養ニーズに合ったフードを与えることが大事です。
3つ目は、日ごろから犬や猫を注意深く観察するということです。犬や猫は言葉を話せないうえに、不調を隠す習性があります。とくに猫は単独生活をしてきた動物で、体調不良を見せると外敵に襲われる危険性があるため、その傾向が強いです。
「いつもと違う様子はないかな?」と気にかけて、日頃からブラッシングやマッサージ、抱っこする際などには、よく体を触るなど、小さな変化も見逃さず、いつもと違う様子があれば、すぐに専門家に相談することが重要です。
犬と猫の健康診断は「年2回以上」が理想
4つ目は、3つ目とも重なりますが、少なくとも年に1回は健康診断を受けてほしいということです。人も1年に1回、健康診断を受けると思うのですが、犬や猫は人よりも4倍以上早く年を取ります。そう考えると本当は年に2回以上、健康診断を受けさせるのが理想です。
具合が悪くなってから動物病院に連れて行ったときには手遅れということも多く「もっと早く病院に連れてきてくれれば救えたのに」と獣医師の皆さんがつらい思いをするケースは少なくありません。
そして、最後の5つ目は、日ごろから信頼できる獣医師やブリーダー、ペット専門店のスタッフなど犬と猫の専門家と接して、彼らから正しい知識や情報を得るようにするということです。これにより、ペットに対して適切なケアができるようになり、さまざまな病気を防ぐことができます。
これら5つのポイントを意識し、行動することが、犬と猫の真の健康に繋がります。真に健康な状態を維持することで、愛犬・愛猫との生活が一日でも長く続き、ペットオーナーにとっての喜びにもつながるのです。
犬と猫に関わる全ての人の知識向上を目指す
山本 俊之(やまもと・としゆき)。ロイヤルカナン ジャポン社長。1986年神戸大学卒業後、P&G Far East Incに入社。一貫してマーケティングに携わる。2002年ウォルト・ディズニー・ジャパン入社、ホームエンタテインメント部門のマーケティングディレクターに就任。日本コカ・コーラのマーケティングディレクターを経て、2008年から現職。
——ロイヤルカナンのウェブサイトでもペットオーナーや、ブリーダー、トレーナーなど犬と猫に関わる人々に向けた情報発信をしていますね。
山本 ロイヤルカナンでは、ペットオーナーさんが正しい情報や知識を得られるようにウェブサイトやSNSで情報を発信しているほか、獣医師が監修したEラーニングサイト「ヘルス ニュートリション ラーニング プログラム」を運営しています。無料で登録、利用ができ、ゲーム感覚で楽しく学べるようになっていますので、チャレンジしてみてください。
先ほど「愛犬・愛猫の“真の健康”のためにペットオーナーが意識し、実践すべき5つのこと」でも触れましたが、私たちは健康診断の受診を非常に重視しています。そのため年に2回、犬と猫の健康診断の重要性を啓発するためにペットオーナーさんに向けて「動物病院へ行こう!キャンペーン」を実施するほか、デジタルメディアを中心に情報発信を強化しています。
さらに、「Team HOPE」という獣医師団体もペットの予防医療や健康診断を推進し、ペットオーナーさんへの啓発活動をしています。当社はこの団体の活動もサポートしています。
そのほかにも獣医師や動物看護師など獣医療関係者向けのEラーニングサイト「ROYAL CANIN ACADEMY」の運営や、ブリーダーやトレーナー、アニマルシェルターの方のためのポータル・コミュニティサイト「ロイヤルカナン PRO CLUB」も提供しています。
ペットオーナーだけでなく、犬と猫を取り巻く専門家全ての方々が正しい情報を持っていただくことで、ペットのためのより良い環境が整っていくと考えています。
——ロイヤルカナンはペットフードメーカーですが、製品を提供するだけでなく、啓発活動も非常に大切な事業と考えているのですね。
山本 そうですね。ロイヤルカナンは創業以来、犬や猫の種類やライフスタイル、ライフステージに合わせたフードの提供を通じて、犬、猫の健康に貢献してきました。しかし、それだけでは不十分で、犬や猫に関わる全ての人が正しい意識・知識を持ち、適切に行動できないと真の健康は実現できません。
そこで、製品提供のビジネスモデルから、フードだけでなく、栄養・健康に関するサービスも含めビジネスを展開する「ヘルスカンパニー」へと事業転換を行っています。例えば猫のオーナーさんの中には「猫にとって病院に連れて行かれるのはストレスだ」と考えて、健康診断に二の足を踏む傾向があります。
でも、それでは猫の病気を見落としてしまいます。私たちが健康診断の受診を呼びかけることによって、より多くの猫が動物病院に来訪します。そこで適切な医療が受けられれば、獣医師もペットオーナーも満足し、お互いの信頼関係も強まるでしょう。
そして何より、犬や猫の受診率向上は、彼らの健康寿命を長くする。我々の活動全てが、ペットに関わるステークホルダーの皆さんに良い効果をもたらし、そして最終的には犬と猫を真の健康に導くことができると信じています。
——そうした取り組みの背景にあるのが、ロイヤルカナンが取り入れている「互恵の経済学」の考え方ですね。
山本 「互恵の経済学」自体は、オックスフォード大学経営大学院とロイヤルカナンの親会社であるマースInc.がイニシアチブを取って始めたもので「自社の利益のみを追求するのではなく、地球環境やステークホルダーとの持続的な関係にも配慮し、相互に利益が得られるような解決策を生み出す存在であるべき」という考え方です。
先ほどの猫と動物病院の例に限らず、犬と猫に関する社会課題への価値を創造し、事業の持続的な成長を実現するビジネスモデルを実践しています。
私たちは、犬と猫に関わる専門家が垣根を越えて協力しあい、相乗効果を発揮することで、ペットを取り巻くエコシステム全体の質が底上げされて、犬と猫を真の健康へと導くことができると信じています。
長年にわたる科学と観察に基づいたペットフード開発を通じて、犬や猫の生態や健康に向き合ってきた当社だからこそ、物いわぬ彼らの代弁者となって、「ペットのためのより良い世界」を作っていきたいと思っています。
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April 26, 2022 at 03:00PM
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「病気でなければ健康」は間違い。ペットとの生活を1日でも長く続けるには - Business Insider Japan
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