Thursday, November 9, 2023

日本のスタートアップ、中国ペット市場席巻 現地完結で - 日本経済新聞

日経ビジネス電子版

長引く不動産不況を引き金に景気減速が鮮明になってきた中国。地政学リスクの高まりや地場企業の台頭など競争環境は厳しさを増すが、それでも14億人を抱える巨大市場は無視できない。日本企業の次の一手を追う。

10年以上にわたり、多くの日本企業が経済成長の果実を謳歌してきた中国市場。だが今年に入り、悲観論が巻き起こっている。

2023年の経済成長率は5%前後の政府目標を達成できるかが焦点で、もはやかつての高い成長率は期待できない。米中対立など地政学リスクも高まっており、東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出で、日本の海産物は中国への輸出停止を余儀なくされている。

中国地場企業の品質面などでの台頭も著しく、消費者は中国ブランドを好んで選ぶようになってきた。中国市場でのマーケティング支援などを手掛ける上海ファーストグループの徳田達紀総経理は、「『日本ブランド』だけでは勝負できなくなっている」と指摘する。

それでも、14億人の人口を抱える中国に魅力を感じている日本企業は多い。帝国データバンクが6月に日本企業に対して実施した調査では、最も重視する拠点として中国が生産(17.1%)と販売(19.6%)ともにトップ。4年前の調査に比べて重要度は低下している。それでも「中国に代わる市場は見当たらない」(中国駐在の日系企業幹部)というのが本音だろう。

難度が高まる中国市場をいかに攻略するか。今、躍進する日本企業の戦略を紹介していく。

中国国内で全部完結 ワンドット、パナソニックHD

注目は、徹底的に中国市場で完結するビジネスモデルを追求するタイプだ。

今年8月に中国・上海で開催されたペット関連見本市「ペットフェアアジア」。出展者数が2000を超えるアジア最大級のイベントで、あるサービスが耳目を集めていた。

「寵本本(ペットノート)」。2016年末に創業した日本のスタートアップ、Onedot(ワンドット、東京・渋谷)が手掛ける即配サービスだ。通常のペットショップの3倍以上となる1200種類のペット関連商品を取り扱っており、宅配アプリで注文すると市内17カ所の倉庫から最短30分でユーザーに商品が届く。

22年5月のサービス開始ながら、利便性の高さから売り上げを一気に拡大。ワンドットの鳥巣知得・最高経営責任者(CEO)は「具体的な金額は明かせないが、上海のペット関連の即配サービスではナンバーワンだ」と話す。

同社は創業から中国市場に特化したビジネスを展開してきた。創業直後の17年からは妊婦向けの情報などを提供する育児メディアを運営し、妊婦の体重管理ツールなども提供してきた。

「中国最大級の育児メディア」と呼ばれるほどの成長を遂げたが、新型コロナウイルス禍で中国の出生者数が急減したのを機にペットを次なる柱に掲げた。少子化や晩婚化に伴い、若い女性を中心に子供の代わりにペットを飼う人が急増しており隠れた成長市場になっていた。まずは育児向けサービスを横展開する形で、21年にペットの健康管理プラットフォームの提供を開始。22年には冒頭の即配サービスを始めた。

矢継ぎ早に新たな一手を打ち出せる秘訣は、ワンドットの経営体制にある。鳥巣CEO自らが中国に駐在し、開発からサービス導入までを中国現地で完結できる体制を整えているのだ。

冒頭のペット向けの即配サービスでは、上海が新型コロナの感染拡大でロックダウン(都市封鎖)されていた22年3月に、宅配需要の高まりを受けてサービスを着想。開発のゴーサインや即配サービスの経験者の採用などを一気に決断し、わずか2カ月の短期間でライバルに先駆けてサービス開始にこぎ着けた。

中国の調査会社によると中国のペット市場は25年に約8100億元(約16.2兆円)規模に右肩上がりで成長する見通し。ワンドットは北京などでもペットの即配サービスを開始しており、「25年までに主要都市へ展開していく」(鳥巣CEO)考えだ。

開発の現地化はここ数年多くの日本企業が進めてきた。だが、CEO自らが中国に乗り込み、現地企業並みの意思決定を進めるのはいかにもスタートアップらしいスピード感だ。一方、大企業でもパナソニックホールディングス(HD)が現地完結型の権限委譲の徹底に磨きをかけている。

デザインを軸に現地開発

上海にあるパナソニックHDのデザイン拠点では6月、企画や販売、開発など現地メンバー約20人がワークショップを開いていた。目的は中国で求められる新たな洗濯機の企画。部門の垣根を越え、1日をかけて議論を進めた。

これまでも中国で意思決定できる体制構築を急いできたパナソニックHD。19年に家電と住宅関連事業を分社して中国・北東アジア社を設立。パナソニックHDの本間哲朗副社長(当時は専務)が中国に駐在、現地で独立して開発できるよう権限を委譲してきた。

4年が経過し、家電の新商品では開発期間を約8カ月と現地企業並みに短縮した。昨年には中国での独自開発で、ペット家電に参入。ドライヤーの技術を応用して、騒音を抑えた乾燥機などを発売している。

家電部門で現在議論が進むのが、デザインを軸とする感性価値の強化だ。「家電の技術進化が進み、単純な機能だけでは差異化が難しくなってきた。いかに空間づくりをして感性価値を高められるかが勝負になってきている」と、中国のデザイン部門のトップを務める赤堀康弘氏は話す。

開発の迅速化を図るために開催しているのが先に紹介したワークショップ。洗濯機では、現在の製品が抱える課題を共有し、中国の消費者が求める価値を議論。年齢など顧客層ごとに4種類の商品アイデアをまとめた。来年の製品化に向けた議論も本格化しているという。冷蔵庫など他の白物家電でもデザイン部門が主導する形で同様の取り組みが進む。

パナソニックHDでは、中国市場で主要な家電のシェアを26年3月期に6.8%と足元の4.8%から高める計画を掲げる。中国・北東アジア社の堂埜茂社長は、「中国は最も厳しい市場だが、グローバルでの家電事業の先導役を担っていく」とし、中国現地のニーズに応じた家電を生み出していく考えだ。

(日経BP上海支局長 佐伯真也)

[日経ビジネス電子版 2023年10月4日の記事を再構成]

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