熟成した食品というとみそやしょうゆ、あるいはチーズやワインなどを思い浮かべる方も多いかもしれません。そして熟成肉ブームに続き、最近注目を集めているのが熟成魚。鮮度が命と思いがちな魚を熟成させるのは難易度が高く、どちらかというと腕利き職人がいる高級すし店で食べられる逸品でした。その熟成魚を科学的に分析することで、家庭でも手軽に楽しんでもらおうという取り組みが動き始めています。(大阪放送局記者 太田 朗)
「ねっとりした食感」
「熟成魚」が食べられる店を探し、訪れたのは大阪のグルメたちが集う大阪・キタの福島エリアの細い路地に面したすし店。知らなければ通り過ぎてしまうような、質素な入り口。階段を上ると、職人と向かい合う6席だけのカウンターが現れます。SNSで評判を呼び、遠方からも予約が絶えない人気店です。
大将から繰り出される淡路島沖でとれたタイや天然の本マグロなどの熟成ずしの数々。すべて職人が豊富な経験に基づき、魚の種類に応じた方法で店内で熟成しています。取材に訪れた日、4回目の挑戦でようやく予約がとれたという男女の客は、ワインを飲みながらすしに舌鼓を打っていました。熟成魚について2人は、「ねっとりした食感で味が濃厚だった」と大いに満足した様子でした。
実は難しい熟成魚
すし職人による熟成魚は、魚の種類に応じた適切な処理や仕込みがカギを握り、難易度が高いといいます。熟成が進みすぎた部分は味が落ちるため捨てることになり、仕入れた魚を有効利用できないことからどうしても価格が高くなる傾向があります。
職人技を科学で分析
水産加工会社「食縁」は、近畿大学発のベンチャー企業。2013年に設立され、養殖業者から仕入れたタイやブリなどの魚を切り身などに加工して国内外に出荷しています。この会社は近畿大学から技術支援を受けて、どうすれば水産物の付加価値を高められるか、味や鮮度にこだわった水産加工に取り組んできました。そして、目を付けたのが熟成魚。科学の力で効率的な生産方法を編み出せば、家庭でも楽しめる味になり、売り先も広がると考えたのです。
まずはタイから
会社が最初に焦点をあてたのはタイ。筋肉が多いタイは淡泊な味が特徴で、うまみを引き出せば違いがわかりやすいと考えました。
熟成の仕組みとは
この会社がうまみを引き出すポイントとして重視しているのが「ATP」と呼ばれる成分を長く維持することです。「ATP」は熟成することで「イノシン酸」に変わり、うまみが増すことが知られています。
低い水温につけるのがポイント
うまみを引き出すには熟成の段階に入るまでになるべく「ATP」を減らさないことが大事だと考えたのです。というのは「ATP」は激しい動きで著しく消費するため、水揚げで魚が暴れるとうまみが引き出しにくくなってしまうというわけです。
そこで考えたのが、生けすの魚を低い温度の水につけること。魚は体温より低い温度の水に入ると動きがにぶることから、この手法にたどりつきました。「絞め」や「血抜き」など、ほかの工程も工夫を重ねてスピードアップ。水揚げから切り身にするまで1時間を切るほどになりました。
サイズと体温が決め手
詳細は企業秘密のため教えてもらえませんでしたが、職人の技がなくても、サイズと体温を調べるだけで安定して熟成させることができるというのです。
歩留まり上げて価格を下げる
また、熟成では切り身を一つ一つ包装してから冷蔵庫に入れることにしました。これが、菌の繁殖を抑えて安全性を確保するとともに、生産性を上げることにもつながりました。手軽な価格を実現するため、熟成した切り身をそのまま出荷できるように工夫したというわけです。
試食してみると
こうして熟成したタイ。私も試食してみました。熟成前のタイと比べて食感は柔らめ。これまでタイを食べたときに感じたことのない、「だし」のような味がしました。さらに、かむほどにこの「だし」の味が強く出てきて、次第に甘みを感じるように。うまみ成分が増したことによる違いをはっきりと感じることができました。
もっと身近な食材に
また、現在はブリでも熟成の研究を進めています。熟成タイの技術をベースに、手軽な熟成魚をもっと広げていこうとしているのです。高度な技術が必要とされ、高級な食材だった熟成魚。科学の力によって、普通に食卓にのぼる日も近いかもしれません。
大阪放送局
太田 朗
平成24年入局
神戸局を経て大阪局で経済担当
関西グルメも“取材”しています
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January 20, 2020 at 03:39PM
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果報は“寝かせて”待て?熟成魚を身近に - NHK NEWS WEB
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