巷はペットブームの只中にある。が、楽しいその共同生活にはしばしば“失踪”という危険がつきまとう。動物の捜索ひとすじ二十余年、先頃『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ』(新潮新書)を上梓した「ペット探偵」藤原博史氏が“最愛の家族”との再会ドラマを明かす。
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私が神奈川県藤沢市で「ペットレスキュー」を設立したのは1997年。以来、イヌやネコをはじめ、フェレットやプレーリードッグ、ウサギ、モモンガからヘビ、インコまで、飼い主のリクエストであらゆるペットを捜索してきました。件数にしてざっと3千、うち7割は依頼者のもとにお戻しし、ネコに関しては8割ほど見つけてきました。今回は、その経験の中から特に印象深い事例をお話しすることにしましょう。
一般社団法人「ペットフード協会」が昨年実施した調査では、全国のイヌとネコの飼育頭数はざっと1857万頭にのぼります。程度の差こそあれ、ある日突然に最愛の家族がいなくなるリスクは、飼い主の皆さんに日常的について回るわけです。今回の記事が、そうした万が一の事態を未然に防ぐ、あるいは早期解決の一助となれば幸いです。
「ネコが1匹いなくなりました。いえ、家で飼っているのではなく、うちに餌を食べにくる子です。すぐに葉山まで来てもらえないでしょうか」
3年前の3月、佐藤さんというご夫婦から電話を受けた私は、やや面喰いました。餌を食べにくる程度なら、よその家の飼いネコかもしれません。そんな動物を探してほしいとは、一体どんな理由があるのか。ひとたび私が動けば、捜索費用も発生するというのに――。それでも、電話口の切羽詰まった声に、私は思わず「行きます」と即答していました。
葉山(神奈川県)の現場に着くと、佐藤さんの家の近くには神社を囲むように鎮守の森が広がり、建ち並ぶ家々はみな大きく、別荘地のような雰囲気でした。野鳥やリスまで生息しています。
あらためて聞くと、佐藤さんの依頼内容は次のようなものでした。
〈いなくなったのはギャルソンという茶トラに白が混じった大柄なオス。もう1匹、妹にあたる三毛猫のコロラというメスがいて、森の中に住んでいる。夫妻は退職を機に2匹を連れて大分へと転居する予定だった。ずっと餌をあげてきた自分たちがいなくなると困ると思ったからだが、その矢先、ギャルソンだけがいなくなってしまった〉
これを聞いて私は、行方不明というよりどこかに出かけているだけではと考えました。捜索でなく、まずはギャルソンをおびき寄せる方がいいと判断し、ご夫婦にこう伝えたのです。
「家の敷地から外に向かい、いつも通りに名前を呼んでみてください。近くで方向を見失っている時や、発情期などで他に関心が向いている場合、自ら戻ってくることがあります。それから、敷地付近にいつもの餌を置いてみましょう。帰るつもりがなくても匂いにつられ、戻ろうとする意識が高くなります」
果たしてその晩、佐藤さんから「ギャルソンが戻ってきた」と連絡を受けました。私は結局2匹とは会わずじまいでしたが一件落着、戻ってくれば何よりです。ところが、話はこれで終わりませんでした。
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February 24, 2020 at 09:31AM
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ネコをたずねて神奈川~大分800キロ大捜索 “最愛の家族”を探し当てる「ペット探偵」(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース
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