『看取り犬・文福 人の命に寄り添う奇跡のペット物語』 若山三千彦著 - 読売新聞

　犬や猫と入居できることで全国的にも知られる、神奈川県横須賀市の特別養護老人ホーム「さくらの里　山科」。本書は、そこで起きた人とペットの奇跡の感動実話集だ。

　主人公の 文福(ぶんぷく) は元保護犬で、殺処分寸前のところを動物愛護団体に引き取られ、ホームにやってきた。文福は、入居者の最期を察知すると、そっと寄り添い続ける「 看取(みと) り活動」を行うという。にわかには信じがたいかもしれないが、本書を読んでもらえば、決して誇張した表現ではないことがわかるだろう。

　文福以外の犬や猫も登場する。様々な人生経験を重ねた高齢者とペットたちとのエピソードは、本の帯に書かれた通り、「思わず涙がこぼれる」ものばかり。それぞれの物語を楽しみながら、人とペットの関わりについて改めて考えさせられる一冊だ。

　本書は昨年出版され、大きな反響を呼びながらも、出版元の経営破綻で店頭から消えていた「看取り犬　文福の奇跡　心が温かくなる１５の掌編」の新装版。新たなエピソードや後日 譚(たん) を追加し、表紙のイラストは「星守る犬」の漫画家・村上たかしさんが描いた。

　著者の若山さんは「さくらの里　山科」施設長で、現在、ヨミドクターでコラム 「ペットと暮らせる特養から」 を連載中。

　（宝島社　１３００円、税別）

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June 22, 2020 at 03:23AM
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