Wednesday, June 24, 2020

被告警官の釈放を被害者が要求 インドネシア、政治の闇が垣間見える裁判の行方は - Newsweekjapan

<誰もが間違っていることを知りながら正すことができない。それが東南アジアの大国の現状だ......>

インドネシアの首都ジャカルタで続く警察官に対する刑事裁判が異例の展開をみせ、高い関心を集めている。この裁判は、インドネシアで最強の捜査機関とされる「国家汚職撲滅委員会(KPK)」の捜査官が襲撃され、左目を失明した事件の容疑者として逮捕された現職警察官2人に対するもので、6月11日に求刑公判が開かれた。

検察側は被告2人の過去の勤務評定を考慮したり、被害者の顔面を狙った犯行ではないとして、2被告に禁固1年を求刑した。

公判では「犯人は2被告とは似ていない」と言う目撃者が証人として呼ばれず、犯行動機に関しても詰めた審理が行われないなど、検察側、さらに裁判官までもが警察官の被告に対して「軽い禁固刑での結審」に執心していると指摘され、マスコミ、人権団体そして当の被害者からも不満が噴出する異例の展開となっている。

大統領の直接指示で逮捕された2被告

2017年4月11日にジャカルタ市内の自宅付近でKPK捜査官のノフェル・バスウェダン氏が、正体不明の男性2人が乗ったバイクから劇薬を顔面に浴び、シンガポールに搬送されて治療を受けたものの左目を失明。右目も約50%に視力が低下する重傷を負った。

ジョコ・ウィドド大統領を支える最大与党「闘争民主党(PDIP)」の党首であるメガワティ・スカルノ元大統領が、大統領在職中の2002年に汚職を撲滅する目的で設立したのがKPKである。

そのKPKのノフェル捜査官は、国会議員や高級官僚が関与する総額2兆3000億ルピアが不正流用されたといわれる「電子身分証明書(e-KTP)事業」汚職疑惑の捜査に関わっていたため、早急な犯人逮捕が警察に課せられた。

しかし事件発生当初から警察関係者など治安当局者の犯行関与がささやかれ、警察は特別捜査チームを結成して「鋭意捜査」の姿勢は示すものの「迷宮入り」を画策しているとの見方が有力だった。

実際、犯行から約2年3カ月が経過しても警察は犯人の逮捕はおろか犯人特定にも至らず、報告書を提出して捜査を終える姿勢をみせた。しかも報告書では「KPKの過剰な権力行使による汚職捜査の手法が襲撃事件の遠因となったようだ」と、まるでKPK捜査官に落ち度があるような内容を盛り込んだ。

これに怒ったのがジョコ・ウィドド大統領で、再捜査を要求。それでも捜査に進展がないと知ると国家警察長官を大統領官邸に呼びつけて犯人逮捕を求めた。

難航していた捜査はこれで一気に進み、大統領から警察長官が叱咤されてからわずか15日後に現職の警察官2人が容疑者として逮捕されたのだった。


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