中国漁船でインドネシア人船員が虐待され、死者が相次いでいる問題で、被害者の男性が本紙の取材に応じた。約8カ月間、夜通し仕事し、得たのは300ドル(約3万2000円)のみ。同じ船団の船員は暴力を受けて死亡し、遺体を海に流された。小説「
◆月給300ドルの約束で…奴隷扱いと知らず
男性は西ジャワ州出身のスワルノさん(31)。昨年11月~今年6月、中国漁船で働いた。「仕事が必要だったんだ」と船に乗り込んだ理由を語る。
スワルノさんは親類から「一緒に船員の派遣会社に登録しないか」と誘われた。親類は
◆重労働割り当てられ、食事は中国人の残り物
「625」の番号が振られた船はインド洋でイカ漁を操業した。船員は中国人17人、インドネシア人9人。中国人はイカの仕分けなど軽作業に就いたが、インドネシア人は網を引き、船を掃除するなど重労働を割り当てられた。
午後9時から午前7時まで休みなしで働く。漁獲が多い時は、翌日午後3時まで18時間ぶっ続けだった。食事は米とタマネギ、中国人が残した肉だった。
「休日を求めると『給料を減らす』と脅された」。スワルノさんは体調を崩し、胃を痛めた。中国人は別の船で診察を受けられたが、インドネシア人は要望しても許されなかった。
◆暴行と過重労働で死亡…遺体は海へ
1月、船団の「623」でインドネシア人のハルディアントさん=当時(30)=が死亡。遺体を海に流された。中国人船長による殴る蹴るの暴行と過重労働で、数人の支えがなければ歩けないほど弱っていた。
給料未払いが続き、スワルノさんらは業務を拒否。すると、殴られ、電気ショック棒で痛めつけられ、この「623」に移された。
「海に飛び込んで逃げた方がいい」。シンガポール近くで海上給油時、同僚は言った。だが、危険が大きく、踏み切れなかった。
◆Facebookに投稿した動画から政府が救出
スワルノさんはフェイスブックに船の動画を投稿。インドネシア政府にも情報が届いた。最終的に韓国に寄港した後、保護された。
給料は1カ月分が5月に家族に送られただけで、残りは支払われていない。
「中国人船員の関心は安全ではなく漁獲量だけ。『自分たちの国の人間ではない』とインドネシア人を見下していたようだ」。スワルノさんは怒りを込める。
◆冷凍庫から遺体…若者ら14人が死亡、3人が不明
こうした虐待問題は4月に発覚し、インドネシア政府は5月、中国に事実解明を要求するとともに、国連人権理事会に報告した。だが、その後も、インドネシア当局が
インドネシアの非政府組織(NGO)「デストラクティブ・フィッシング・ウオッチ」によると、昨年11月~今年8月、中国漁船で、主に20代前後のインドネシア人船員14人が死亡、3人が行方不明になっている。
インドネシア警察は船員をあっせんした派遣会社を捜査。人身売買の罪で幹部らを訴追した。
同NGOは「安全が保障されるまで、インドネシア政府は中国漁船に船員を送るべきではない」と強調。中国の司法当局との連携や派遣会社の監視強化、外国漁船で働く危険性の啓発を訴えている。
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September 14, 2020 at 11:55AM
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