Saturday, December 12, 2020

不人気魚を食卓へ お魚かたりべ・森下倫年さん - 朝日新聞デジタル

 不人気や流通の少なさから食卓に上らなくなった魚を「低利用魚」という。瀬戸内の低利用魚に光をあて、味や調理法を広めて普及に貢献したとして水産庁から昨年1月、県内初の「お魚かたりべ」に選ばれた。若者の魚離れなど逆風は強いが、「魚には季節感が詰まり、五感で楽しめる。価値を上げたい」。

 活動の主体は自身が会長を務める「岡山水産物流通促進協議会」。それまでバラバラだった県内の加工業者や県水産研究所など官民がまとまり、昨年立ち上がった組織だ。「岡山の魚(とと)を食べよう」という意味を込め、「おかとと」の名でホームページを開設している。

 岡山市中心部で生まれ育ち、3歳から近くを流れる西川や枝川で魚を捕って遊んだ。水産関係の仕事に就くことを志し、東海大海洋学部へ。静岡県でマグロの研究に没頭した。卒業後は帰郷して県水産研究所などで勤務。32歳で県漁連に入った。

 低利用魚の価値向上に取り組むきっかけは40代後半だった20年ほど前。倉敷・下津井で漁師がぼやいた。「ゲタをもっと食べてもらいたい」

 ゲタとは瀬戸内海でよく揚がるシタビラメのこと。さっぱりとして、海外ではフランス料理にも使われる高級食材。煮付けや唐揚げにしても風味を増す。県内ではおなじみの魚だったが、数十年前から姿を消していった。

 魚食量全体の減少や、鮮魚店が減りスーパーが増えたことなどが背景にある。サーモンやマグロなどの輸入・養殖魚の台頭で消費傾向は大きく変化。ゲタのほか、コノシロやボラ、クロハゼなど評価されるべき魚が食卓から遠ざかった。「このままでは岡山の漁師は食べていけなくなる。自然や季節感を大事にする風土の中で培われた食文化も失われる」

 ゲタの魅力を講演で繰り返し伝え、全国の漁連が自慢の地魚を紹介するウェブサイト「プライドフィッシュ」で取り上げもした。2014年の全漁連主催の料理コンテストでは、ゲタの切り身を揚げてフリッターにした創作メニューを自ら出品。準グランプリに選ばれた。

 2018年に県漁連常勤理事を退いた後も情熱は冷めず、低利用魚の魅力発信に尽くしている。活動を経て、低利用魚を取り扱う販売店や飲食店もじわりと増えてきたと感じる。「地域の食文化を残すためにも低利用魚の魅力を伝えていく。魚と食卓をつないでいきたい」

 いま、「推し魚」として普及に力を入れるのはヒラ、チヌ、スズキ、ハモの白身4種。レシピの提案や高校生とタッグを組んで百貨店での啓発活動などに取り組んでいる。(吉川喬)

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 もりした・ともとし 岡山市北区柳町の出身。3歳から釣りを始め、夢中になりすぎて帰宅が遅れ、捜索願を出されたことも。県漁連では常勤理事を務めた。

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 おかととが特にPRに力を入れるのが、金色の魚体が美しいニシン科のヒラ。岡山など一部地域でわずかに消費される程度だが、その濃厚な味は「ヒラの味、小骨無ければ 献上魚」と伝えられるほどだ。

 1956年創業の老舗「福寿司」(岡山市北区奉還町)では、皿が透けるほど薄く切ったヒラの刺し身を客に出し続けている。店主の窪田悟さん(50)によると、昔は県内の多くのすし屋で並んでいた。だが、骨が多く包丁を細かく入れる「骨切り」などの手間が必要で、15年ほど前から姿を消しつつあるという。

 窪田さんは「淡泊であっさりしているが、独特のうまみがあってくさみが少ない」。昔ながらの味でもあり、常連客からは根強い支持がある。

 おかととの活動が始まってから、取り扱う飲食店や売り場が少しずつ増えている。窪田さんは「岡山で伝統的に食べられてきたおいしさを大切にしていきたい。ぜひ一度味わってみて」と呼びかけている。

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