Sunday, February 7, 2021

柏崎で全国初の養殖成功、ブランド魚になれるか - 朝日新聞デジタル

 「ヒゲソリダイ」という名前は、取材を始めるまで聞いたことがなかった。でも、新潟県柏崎市にある研究機関が全国で初めて養殖に成功した魚で、市役所も「柏崎の新たな特産品に」と力を入れているという。昨年に続く2年目の販売が近く行われるのを前に、養殖地を訪ねてみた。

 水槽があるのは、東京電力柏崎刈羽原発に隣接する同市荒浜地区の海洋生物環境研究所(海生研)実証試験場。20トンの円形の水槽の中で、黒っぽい魚がひしめきあうように泳いでいる。

 海生研は発電所からの温排水が生物に与える影響を調べる機関で、柏崎の実証試験場は、1号機が初臨界を迎える直前の1984年11月に完成。これまで240種を超える生物を飼育し、卵をかえす研究にも取り組んできた。

 養殖のきっかけは、近くに住む新潟漁協柏崎支部総代、柴野一志さん(57)の「ヒゲソリダイの稚魚がつくれたらいいね」との打診だった。

 ヒゲソリダイはイサキ科の魚で、下あごの部分が、ひげをそったように滑らかなのが名前の由来だ。地元では、カヤを刈る秋に捕れることから「カヤカリ」と呼ばれ、網にかかった魚を食べた漁師などの間では、おいしさが知られていた。

 しかし、マダイやヒラメと違い、この魚を狙った漁が行われるわけではないため、漁獲量は少なく、一般の消費者には浸透していなかった。

 海生研は、2017年に親魚から採取した直径約0・9ミリの卵から稚魚をかえすことに成功。翌年、育った魚が卵をうみ、全国初のヒゲソリダイの「完全養殖」を成し遂げた。研究にあたった吉川(きっかわ)貴志さん(48)と塩野谷勝さん(27)は「他の魚がエサを食べなくなる夏でも、どんどん食べて大きくなる。養殖に向いている魚だと感じた」と話す。

 ただ、海生研は研究機関で、養殖の事業者ではない。昨年、約6千匹の稚魚の半数を柴野さんが会長を務める柏崎漁業研究会に譲渡し、残りは、近海で定着することを祈りながら放流した。

 特産品づくりを目指す同研究会は、メンバー5人が海生研に通ってエサを与え続けた。水槽の大きさの制約から一部を放流し、現在は、ふ化から1年半ほどで25センチくらいに成長した約900匹が育てられている。

 どんな味なのか。なじみの料理店で姿造りと煮付けにしてもらった。

 きれいな白い身は脂がのり、弾力を感じる。こりこりとした食感の皮とあいまって、バランスの良いおいしさを生みだしている。煮付けもしっとりと仕上がり、煮汁の味だけでなく、魚自体のうまみを楽しむことができた。

 2年目の出荷に向けた準備を進める柴野さんは「旬は冬、水温が下がった頃。柏崎では2、3月にマダイやヒラメといった天然魚が市場に出てくるので、その前に『柏崎の魚』として売り出せればいいと思う」と語る。

 課題は、養殖が採算の取れる事業として成立するかだ。施設を整えて、エサ代や人件費などをまかなうためには、市場での価値を高めて、ある程度の値段で取引されるようにならなければならない。「簡単ではないが、全国のどこでもやっていない『オンリーワン』の強みがある」と柴野さん。

 テニスの錦織圭選手の好物として一気に知名度が高まったノドグロのようなブランド魚になれるだろうか。「にわかファン」の一人として期待したい。(戸松康雄)

     ◇

 ヒゲソリダイ 昨年2~4月に続く2年目の出荷が11日に予定されており、13、14日に柏崎市内のスーパーで販売される。同市は14日、ヒゲソリダイの認知度向上を目的に、市産業文化会館で講演会と試食会を開く予定だ。

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