“巣ごもり”ファッションに注目が高まる中、ペットのための服も見逃せない。インスタグラムで活躍する“ワンちゃんインフルエンサー”のボビー・ビリー(Boobie Billie)は、カメレオンのごとくどんなスタイルも着こなし、その自信に満ちた姿と遊び心を忘れないユーモアで人々の心をつかんでいる。最近の“巣ごもり”ファッションでは、「プラダ(PRADA)」「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」「ナイキ(NIKE)」を着こなした。それがリアルかフォトショップだったかはさておき、ペット服が急成長中の市場であることは事実だ。近年では、トム・ブラウン(Thom Brown)やドナテラ・ヴェルサーチェ(Donatella Versace)がこの分野に取り組み、プロモーションのためにそれぞれの愛犬であるヘクター(Hector)とオードリー(Audrey)を起用している。
また犬はファッション界に無縁の存在ではなく、最近も「バハ イースト(BAJA EAST)」や「レラ ローズ(LELA ROSE)」のランウエイショーや、犬用セーターなど提案した「モンス(MONSE)」2019年プレ・フォール・コレクションのルックブックに登場。さらに、ここ数年の間にエッセンス(SSENSE)やブラウンズ(BROWNS)、ザ・ウェブスター(THE WEBSTER)などのショップもデザイナーブランドのペット服や小物の需要増加に着目してオンラインに専用ページを設けた。
ここではバイヤーやデザイナーへのインタビューをもとに、外出制限のかかる現在の商況や最新のスタイルを紹介しよう。愛らしいビジュアルで、ストレスのたまる日々に少しの癒やしを届けられたらうれしい。
1. ブリジット・チャートランド(Brigitte Chartrand)
=エッセンス ウィメンズウエア・バイインング部門 バイス・プレジデント
エッセンスの顧客は70%以上が18〜34歳のため、いかにミレニアル世代がペット、特に犬のための消費を増やしているかに着目した。また、「#SSENSEInterns」のハッシュタグともに従業員の犬をインスタグラムに投稿したときも盛り上がりを見せたことから、2019年12月にペット服の発売を始めた。多くの人が在宅勤務になって愛するペットや家族と過ごす時間が増えているから、2月末から現在までペット服の売り上げは増加中。皆、気持ちを高めることに関心を持ち、多くの人が犬を家族に迎えることを考えているし、オーナーの数は増えていくと思う。私も犬を飼おうかと考えているくらい!
2. ホリー・ハーディング(Hollie Harding)
=ブラウンズ ノンアパレル・バイイング・マネジャー
私たちはクリスマスに向けて気分を高める楽しいものを顧客に提案したくて、ギフトセレクションと一緒にペット服のカテゴリーを探求することにした。ペットのためのギフト購入は広がりつつあり、「バーバリー(BURBERRY)」や「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」をはじめとする多くのブランドが手掛けている。ペット服の販売は、イーストロンドンの店舗での期間限定イベント「ペット宮殿」と同時にスタート。デジタルクリスマスカード用にペットのポートレートを撮影して顧客に楽しんでもらう企画だったけれど、反響の大きさから年が明けても継続することにした。
3. ロール・エリアード・デュブレイル(Laure Heriard Dubreuil)
=ザ・ウェブスター創業者兼社長
私たちのミッションは顧客のライフスタイルのあらゆる面に寄り添うこと。だから、ペット服や小物を取り扱うことはごく自然だった。ペットは生活の中でかけがえのない存在であり、飼い主自身の服と同じ品質のものをペットにも提供することは重要。すでに2年以上このカテゴリーに取り組み続けていて、売り上げや流通も安定している。そして、私たちの顧客にとって犬が唯一の相棒であることを考えると、今後どんどん売り上げが伸びても驚きはない。
4. カリーナ・ツェルニク(Karina Tselnik)
=ガーメントリー(GERMENTORY) オペレーション・マネジャー
私たちの顧客は、自分の服がどのように作られているかに非常に高い関心を持っている。またペットのことも深く愛していて、ペットのニーズに応えると同時にサステナブルなライフスタイルを支援し続けられるようにしたいと考えている。ペットと家で過ごす時間が増えるにつれて、あらゆるライフスタイルグッズ同様に売り上げは伸びている。飼い主との時間が増えて、ペットにとっても夢のような時間になっているんじゃないかな。
5. スーザン・アレキサンドラ(Susan Alexandra)
=アクセサリーデザイナー
動物が生きがいの一つである私にとって、ペットのためのアイテムを手掛けるのは当たり前だった。私にとってのミューズは、チワワとパグのミックスのピジョン(Pigeon)。この子を今さらに素敵にするために必然的なステップでもあったの。立ち上げは本当に好評で、売り上げも素晴らしかった。“巣ごもり”中の人々は自分のペットたちがもっと素敵に見えるようにと思っているようだ。確かにロックダウン中に唯一外に出るのは犬の散歩をするときだから、理にかなっているね。
6. マーティン・アリ(Martine Ali)
=ジュエリーデザイナー
ペット用品を手掛けることは当初から考えていた。まだブランドが軌道に乗っていなかった頃に参加したLAでのイベントで、ある女の子が一通り商品を見た後、犬の首輪はないのかと尋ねたことがあったの。当時は正直あまりいい気分ではなかったけれど、今なら理解できる。犬たちは飼い主自身の延長線上にあり、飼い主と同じくらいかっこよく見せる必要があるから。商品の売れ行きは今のところすごく好調。困難なときに自分にお金を使うのは躊躇するかもしれないけれど、誰か(“誰か”というのはもちろん自分のペット)のために使うなら全く別の話で、心が満たされているように感じられる。特に犬の散歩なら社会的に受け入れられる今は、自分と自分の相棒のためにカッコよく決める努力をすべき時。
7. クリスチャン・コーワン(Christian Cowan)
=「クリスチャン コーワン」デザイナー
私は実際に犬を飼っているし、他の飼い主と同じように愛犬のマンゴー(Mango)に夢中。美しく着飾ったオーナーと、機能性重視の素敵とは言えないハーネスをつけた犬が並んでいるのを見ると残念な気持ちになるし、自分のワンちゃんをもっとおしゃれにしてみたら?と思ってしまう。ドッグウエアの発売は今までで一番衝撃的だった。人気商品になるとは期待していたけれど、まさか一日に数百着売れるとは思いもしなかったからね。犬の力はすごい!家族をつくるよりも仕事を選ぶ人が増えるにつれ、犬を飼うことが注目されるようになっているのだと思う。そうなると皆、ありったけの関心とお金をそこに注ぐようになる。
8. “A”
=「69」匿名デザイナー
「69」はみんなのためのものであり、そこには犬も含まれる。生きていくことを助けるブランドだ。
9. アレキサンダー・ストゥッテルハイム(Alexander Stutterheim)
=「ストゥッテルハイム(STUTTERHEIM)」創設者
長年にわたって多くのドッグオーナーから、犬用のレインコートを作ってほしいとのリクエストをもらっていた。雨から彼らの身を守るだけでなく、悪天候の中でもカッコよく決めるためだ。“ウラジミール”レインボー・ドッグコートは発売と同時に爆発的にヒットし、数日でほぼ完売した。もちろん生産を続ける予定で、将来的には高機能で新しいスタイルの開発を考えている。私が理解しているのは、犬たちはこの非現実的なパンデミックを全く知らない中でも飼い主に心休まる時を与えているということ。実際みんなが犬を飼っていたら、きっと収束後の世界はより優しく、いいところになると思う。
10. スコット・ステューデンバーグ(Scott Studenberg)
=「バハ イースト」創設者兼クリエイティブ・ディレクター
コレクションのデザインをするとき、私は周りから多くの刺激を受ける。自分の愛犬のために(「バハ イースト」のシグネチャースタイルである)“グラムレジャー”を作るのは、時間の問題だった。“犬は人間にとって大親友”という認識は今、かつてないほど広まっている。外出自粛中の飼い主たちは人間との交流が減り、犬たちが圧倒的に親友のポジションを担っているからね。自分の犬をとことん甘やかして、散歩を心から楽しむ絶好のチャンスなんじゃないかな?
11. シルヴィア・ランカニ(Silvia Rancani)
=「ザ デニムドッグ(THE DENIM DOG)」 創設者
ペット用品に挑戦しようと決めたのは、1年前。私はデニムの専門家であり動物愛好家でもあるので、その両方を生かしてレザーと上質なデニムを組み合わせた犬用アクセサリーラインを作ろうと考えた。ペット服や小物はまだまだ未知の世界で、大きな可能性を秘めている。人々は愛するペットのためにますます買い物をするようになっているし、品質を気にかけていて上質なアイテムのためにお金は惜しまない。その一方で、ペット用品を扱うことは決して簡単なことではない。商品開発の際に機能性において考慮すべき点はたくさんある。見た目だけでなく、機能性と安全性も同じように重要だからね。
正直に言うと、売り上げはよくない。オンラインでの販売が中心だとしても、ブランド自体がまだ新しく、あまり確立されていないから。ただ、アメリカ市場ではいい反応があったし、ドイツとイギリスの顧客もいて満足している。
12. ザハラ・アハメド(Zahra Ahmed)
=「DL1961」 最高経営責任者
私たちは2008年以来、環境に優しいデニムを開発してきた。ブランドの成長とともにキッズにもラインアップを広げたところ、友人や顧客からペット服を作ることは検討していないかと聞かれた。そして18年、ニューヨークを拠点とするデザインチームが(犬用の)“フィド ケイナイン トラッカー”ジャケットを手掛けたときには、大きな反響があった。ブランドの顧客や友人だけでなく、クリエイティブ・ディレクターの愛犬バー(Burr)さえもこのジャケットを気に入ってくれてね。近頃は、「DL1961」のジャケットを着こなした犬が私たちのオフィスを歩いている光景も珍しくなくなった。
最近はペットと家で過ごす時間が増えたことの影響もあり、売り上げはかなり伸びている。「DL1961」では自分たちのことを犬をはじめとする動物愛好家だと考えているので、特にこういうときに家族の一員であるペットと一緒に時間を過ごせることに感謝している。
13. メラニー・カプラン(Melanie Kaplan)
=「ザ カンパニー ストアー(THE COMPANY STORE)」商品開発部
「ザ カンパニー ストア」の顧客と従業員にとって、ペットは大切な家族の一員。そのため、ペット用品への参入はごく自然なことで、年々拡大している。私たちは常に顧客に喜びとつながりを届けたいと考えているので、着心地抜群のおそろいで着られるパジャマや、小物などを提案してきた。さらに、商品開発チームは来たる春夏に向けた新作コレクションに注力している。
今私たちにできることは家の中に心地よさをもたらすことと、このつらい時期の裏にある幸せに焦点を当てること。お客さまを笑顔にするのは、“てんとう虫タオル”にくるまったフレンチブルドッグかもしれないし、愛する人たちと食卓を囲んでいるときかもしれない。それが何であれ、「ザ・カンパニー・ストア」はリアルな人(猫や犬も)との温もりを分かち合うためにある。
14. サブリナ・アルバレロ(Sabrina Albarello)
&カテリーナ・カレラ(Katerina Karelas)
=「ベリー インポータント パピーズ(VERY IMPORTANT PUPPIES)」創設者
私たちは犬への愛情からペット服のブランドをスタートさせ、現在のトレンドを念頭に置いた新たなパーソナルラインを立ち上げた。現状の売り上げは減少している。前例のない事態を前にして、他のニーズの優先度が高まっているのは確かだと思う。一方、ソーシャル・ディスタンシングが重視され、散歩は社会的に許容される数少ない活動の一つ。ペットとより多くの時間を過ごし絆を深める中で、甘やかしちゃう人も間違いなくいるはず。
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