うにちゃんは、警戒心の強い野良猫の子猫だったが、木本(仮名)さんが暮らすアパートの部屋の中に入ってきた。野良猫として生きていくのは困難と思った木本さんは、ペットの飼える家に引っ越してうにちゃんと暮らすことにした。
可愛い茶トラの子猫
東京都に住む木本さんは世田谷区のアパートに住んでいたのだが、2007年11月、近所に茶トラの子猫が現れた。警戒心が強く、飼い猫ではなく野良猫のようだった。可愛いのでごはんを与える人もいて、その人たちが保護するために捕まえようとしたが、警戒心が強く捕まえられなかったという。
氷雨が降る日、木本さんが玄関の前にミルクを置くと、子猫は部屋の中に入ってきた。ドアを閉めるとひどく夜鳴きをした。木本さんは、ご主人と相談し、「もしかしたら母猫が近くにいるのかもしれない」と、翌日猫を外に出した。
子猫は、翌日も木本さんのアパートの近くにいたが、ミルクを置いても寄ってこなかった。近所のペットショップでおもちゃを買ってきて、遊ぼうと誘うと、また部屋の中に入ってきたという。
「母猫の姿も見えず、このままでは、他の野良猫にやられてしまって生きられない。保護しようということになったんです。今度はそれほど夜鳴きもせず、ソファの上ですやすや寝ていました」
大きな公園で迷子に
獣医師に「生後3カ月か4カ月くらいだ」と言われたので、誕生日は7月7日にしたそうだ。名前は「うにちゃん」にした。住んでいたアパートではペットを飼えなかったので、翌月、猫を飼える家を見つけて引っ越したそうだ。
2007年12月、クリスマスの頃、木本さんは、うにちゃんにハーネスをつけて大きな公園に散歩に行った。
「うちの近くにリードもつけずに猫の散歩をする家族がいて、うにを保護した時、こんなふうに散歩してみたいと思ったんです」
しかし、木本さんがうっかりリードから手を離したすきに、うにちゃんはどこかに行ってしまった。探しても見つからず、翌日の夜中、もう一度探しに行ったという。
「ミー」と、小さな鳴き声が頭上からしたので見上げると、松の木の上の方、5mくらいのところに猫の目がキラリと光るのが見えた。木本さんは消防署に連絡し、事情を話してレスキューしてもらった。木に登ってうにちゃんを捕まえてくれた隊員は腕を噛まれたようだったが、隊長が「絶対に離すな」と言ったので、うにちゃんをしっかり抱えて降りて来てくれた。
木本さんは帰宅後、うにちゃんの爪の間に入っていた松やにを、泣きながら必死で取り除いた。それ以来、一度もうにちゃんを外に出していないそうだ。
犬や人が怖くて高い木の上に登ってしまったうにちゃんだが、じつは高いところは苦手。登ってみるけど降りられず、「降ろしてくれ」と言う。
ペットというくくりでは語れない
うにちゃんは内弁慶で、お客さんが来ても、どこかに隠れてしまって姿を見せない。木本さんが猫を飼っていることを知らない人もいるほどだ。
「うには、すごく一緒に生活しやすい子です。主人は実家で猫を飼っていたのですが、こんなおっとりした猫はなかなかいないから、猫がみんなこういうもんだとは思わないほうがいいと言いました」
おしゃべりが大好きで、よく話しかけてくる。ごはんがないとかお尻が汚れているから拭いてくれとか、よく話しかけてくるという。「話を聞いてくれたり、具合が悪い時はそばにいてくれたり、うには私たちにとって親友であり、大事な娘でもある、ペットというくくりでは語れない存在なんです」
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April 22, 2020 at 10:23AM
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家の中に入ってきた野良猫の子猫 今では「ペットというくくりでは語れない存在」 - 神戸新聞社
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