三陸沖で南方系の魚が増えているとの見方が岩手、宮城両県の海に長年潜ってきたダイバーたちに広がっている。複雑な形状や鮮やかな色彩などの特徴で目立ち、「見慣れない魚と最近よく出合うようになった」と口をそろえる。海の異変を体感したことで、温暖化の影響を懸念する声が上がる。(写真映像部・藤井かをり)
ここ2、3年で大きく変化
「まさか水温12度の三陸の海で出合うとは」。岩手県大船渡市でダイビングショップを経営するインストラクター佐藤寛志さん(47)は昨年12月、大船渡湾でハナミノカサゴを見つけた。大きな胸びれと長いとげを持ち、駿河湾以南に生息するとされる。
佐藤さんは、黄色い帯が側面に走り、沖縄県で「グルクン」と呼ばれるタカサゴなど南の海域に生息する魚を、他にも頻繁に見掛けるようになっていた。「20年ほど三陸の海に潜っているが、ここ2、3年で魚種が大きく変わったと感じる」と語る。
「死滅回遊魚」が越冬可能に
暖かい海で生まれた魚の卵や幼魚は、黒潮など暖流に乗って沿岸に流されてくるものの、冬場の水温低下に耐えられず死んでしまい、「死滅回遊魚」と呼ばれる。宮城県の女川湾ではこうした魚が海水温の上昇により越冬できるようになった。要因には海水温の上昇が指摘される。
「冬は死んでしまっていたイセエビやスズメダイが7、8年前から越冬するようになった」。女川湾を中心にダイビング歴50年という渡辺信次さん(71)は、こう話す。額が突き出たウミテングや、胸びれで海底を歩くカエルアンコウなど伊豆の海に住む魚も見るようになった。
女川町でダイビングショップを営むインストラクター高橋正祥さん(42)は女川湾の海水温の変化を記録してきた。「10年前、冬場の最低水温は3~5度だったが、今は7~8度にとどまっている。海は確実に暖かくなっている」と強調する。
温度高い「暖水渦」要因か
三陸沖で暖かい海域の魚が増えている要因として、周囲より温度の高い「暖水渦」を指摘する声がある。暖水渦が北海道と東北の太平洋沖で頻繁に発生して親潮の沿岸寄りの流れを妨げ、海水温を上昇させているとの見方だ。
栄養分に富み、魚を育てる「親」になる親潮は、例年冬の季節風の影響を受けて1月ごろから千島列島に沿って南下する。3~4月に最も南に張り出し、11~12月にかけてゆっくりと後退する。
近年は親潮の流れが弱い傾向が続いている。海洋研究開発機構(神奈川県横須賀市)の美山透主任研究員は「黒潮に由来する暖水渦が2010年から頻繁に発生するようになり、親潮の沿岸寄りの南下をせき止めている」と指摘する。
気象庁のデータを見ると、親潮は近年、南下が弱く、面積も小さい傾向が続く。20年春の平均南限位置は北緯41・5度で、現在の方法で統計を開始して以降、最も北になった。
仙台管区気象台(仙台市)の大門秀志主任技術専門官は「以前は暖水渦が発生しても数カ月で消えていたが、最近は1年以上張り付くことが増えた」と理由を説明する。
暖水渦が親潮の南下を妨げて海水温を上昇させ、魚種の分布にも影響を与えている。
昨夏は三陸沖で「海洋熱波」も
海洋研究開発機構と北海道大の研究では、暖水渦の影響で、水温が極端に高い日が5日以上継続する「海洋熱波」と呼ばれる現象が10~16年の毎年夏、北海道と東北の太平洋沖で発生したという。昨夏も三陸沖で大規模な海洋熱波が起きたと見られる。
海洋熱波は、北海道南東沖で10年からブリの漁獲が急増したことにも関連があるとされる。
研究に携わった美山主任研究員は「暖水渦の発生メカニズムははっきりしていないが、今後海洋生態系に大きな影響を及ぼす可能性がある。引き続き調査を進めたい」と話す。
宮城県水産技術総合センター(石巻市)の矢倉浅黄技師は「親潮など海流の変化に加え、最近は温暖化の影響で気温も少しずつ上昇し、海水温が高まる要素が複数ある状態。今後も南方系の魚が増える可能性がある」と見ている。
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February 06, 2022 at 04:00AM
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