Saturday, February 5, 2022

「水銀入りの魚と知っていても食べざるを得ない」"ブラジルの水俣"アマゾン環境破壊の現場を独自取材【報道特集】 - TBS NEWS

「水銀入りの魚と知っていても食べざるを得ない」“ブラジルの水俣”アマゾン環境破壊の現場を独自取材【報道特集】

世界最大の熱帯雨林、南米のアマゾンで環境破壊が加速しています。私たちは先住民が住む地域を特別な許可を得て取材。アマゾンで起きている問題の深刻な実態が明らかになりました。

■1年間に東京都6個分の森林が消失

南米大陸に広がるアマゾン。熱帯雨林は日本の国土面積の15倍に及び、大量の酸素を生み出すため「地球の肺」とも呼ばれます。先住民の居住地域など広い地域で開発は厳しく規制されていますが近年、森林の違法伐採が加速しています。アマゾンの樹木は海外向けの木材として高値で取引されるほか、農地としての開拓も進み、1年間の森林伐採面積は約1万3000平方キロメートル、東京都の面積の6倍にも相当します。

ブラジル政府は「2028年までに、森林の違法伐採をゼロにする」という目標を掲げますが、ボルソナロ大統領はアマゾンの開発に積極的な発言を繰り返しています。

ブラジル ボルソナロ大統領:
アマゾンは大変豊かな場所だ。例えば、生態系や鉱物資源、広大な空間、天然ガス、石油、水資源がある。

現在、議会には先住民の居住地域を変更し開発を進めることを目的とする複数の法案が提出されています。

■先住民の殺害も 横行する違法伐採

現場では何が起きているのか。
特別な取材許可を得て、ブラジル北部タパジョス川沿いにある、先住民ムンドゥルク族の集落を目指します。ムンドゥルク族は広大なアマゾンに太古の昔から暮らし、今はジャングルのなかに約1万人が80の集落を作っているとされます。

この地域一帯の首長を40年近く務めるジュアレス氏。強い危機感を抱いています。

ムンドゥルク族 首長 ジュアレス氏(61):
これほどまでに多くの違法業者が入ってきているのは過去に見たことがありません。森や清流、あらゆるところで違法な業者が土地を荒らしていくのです。

多くの違法業者がムンドゥルク族の土地に侵入し、環境を破壊しているというのです。さらに違法業者を監視・告発していた先住民のリーダーが命を奪われる事態にまで発展しました。

ムンドゥルク族 首長 ジュアレス氏:
違法な伐採業者が地域のリーダーを殺害しています。いつも最前線で土地を守っている人たちが犠牲になっているのです。

■自警団のパトロールに密着“侵入者”の痕跡が

ある朝、若い男たちがボートに乗り込みました。違法業者を監視するためにムンドゥルク族が組織した“自警団”です。

萩原 豊 記者:
違法な侵入者がいないか、集落の若者達が見回りをしています。手には銃にナタ。緊張感が漂います。

同行した先住民の若きリーダーの一人、アンデルソン氏が異変に気付きました。

先住民協会 会長 アンデルソン氏(31):
この痕跡は今日ついたものですよ。きっと、夜の間に動いているのでしょう。

泥のなかに残った轍。それほど時間が経っておらず、木材を運び出すためのトラクターのものとみられます。

先住民協会 会長 アンデルソン氏:
この道の木を切って、切り拓いて、持ち去っている。私たちの土地から盗んでいるんですよ。許可もなく、勝手にね。他にも道があるから、必ず奴らを見つけてやる。

■アマゾンに迫る新たな危機 “違法なゴールドラッシュ”

アマゾンの破壊は違法伐採だけではありません。ムンドゥルク族の先祖がいた場所だという「聖地」の近く。川の中央あたりにいくつもの船が不自然に停泊しています。これらは「金」を違法に採掘する業者の船です。川を進むと、次々と違法採掘船が現われました。

業者の目的は川底の土砂を掘り返し、砂金をさらうこと。これ以上船に近づくと「銃撃される」おそれもあるといいます。この川の上流では300隻以上が、列をなしていたことも確認されています。関係者の協力を得て採掘船の内部へ入ると、長期生活に備えてか大量のガスボンベなどが積まれていました。業者たちはこうした船の上で生活しながら、金の採掘を続けるといいます。

■えぐられた大地 違法採掘は川以外にも

違法採掘の現場は川だけではありません。川岸からジャングルの細い道を分け入ると、人の手によって掘り返されたとみられる地面が数か所見つかりました。

先住民協会 会長 アンデルソン氏:
違法採掘がこの先も続いていますが、これ以上、奥まで歩いて行くと危険です。危ないのは違法業者と出くわすことです。私たちは少人数ですから身に危険が及ぶかもしれません。

萩原記者:
違法な金の採掘現場にやってきました。ここから地面が大きくえぐられています。大規模なジャングルの破壊が起きています。

この地域だけで3万から5万人の採掘業者がいるとされ“違法なゴールドラッシュ”と呼ばれています。国際NGOなどの調査では、金の採掘による川の破壊は600キロ以上にわたり、2500以上の違法な採掘鉱山があるとされます。

■違法な採掘が人をも蝕む

さらに、こうした採掘によって先住民の身体も蝕まれていることが明らかになりつつあります。ムンドゥルク族の集落に一つだけある教室で学ぶウェンディさん。将来の夢は大学に進学し、歴史家になることです。

5年前、13歳のときに突然、右脚の状態が悪くなりました。それまでは健康そのものだったといいます。

ウェンディさん:
当時は、足を全く動かせませんでした。感覚すらありませんでしたから。

足の感覚を失い2年もの間、寝たきりに近い状態に。原因は分かりませんでした。

ウェンディさん:
魚を食べたら足が腫れるようになりました。母も同じような症状になって、歩くことができなくなりました。その母に『水銀の影響じゃないか』と言われたんです。

実は、金の違法採掘に水銀が大量に使われているのです。砂金を含んだ泥に水銀を混ぜると金が吸着します。この塊を熱して水銀を蒸発させると、金だけを取り出すことが可能になります。金が吸着しなかった大量の水銀はそのまま川に捨てられ、この地域では2年間で100トン以上もの水銀が使われたと推計されています。

■基準の4倍の水銀が検出された10歳児も

水銀の被害について、ムンドゥルク族は「徹底的に調査して欲しい」と手紙で訴えました。

ムンドゥルク族が水銀調査を訴えた書簡:
『子ども達が汚染されること、川が滅びることを心配しています。私たちは、この件を徹底的に調査してもらいたいのです』

これをきっかけに専門医ら15人による国立研究機関の調査団が始動。約200人の先住民から聞き取りを行い、全員の髪の毛を採取して水銀の量を分析したところ…。

調査団責任者 パウロ・バスタ医師:
何と言えばいいのでしょうか。驚きの結果でした。200人の髪の毛を調べましたが、全ての髪の毛から水銀が検出されました。

その濃度も問題でした。WHOが定めた安全基準を6割の人が超えていたのです。基準の4倍の水銀が検出された10歳児もいました。

調査団責任者 パウロ・バスタ医師:
結果を分析すると明らかになったのは、水銀濃度が高い人たちには、神経系の症状が現われているということです。

調査団が面談したムンドゥルク族の子ども達には視野の変動や筋萎縮などの症状があったほか、近年は問題を抱えて生まれてくる乳児も増えているといいます。

右脚が突然悪くなったウェンディさんも診察を受けていました。

調査団責任者 パウロ・バスタ医師:
ウェンディさんは調査したなかで、水銀被害が最も大きい集落で生活していた人でした。

ウェンディさんは毛髪の水銀濃度が高く、感覚機能にも問題があり、水銀による影響の可能性が高いとされました。また、別の子ども達には記憶障害や言語、学習能力の遅れも確認。
調査団が地域の川で捕れた88種類の魚を分析したところ、全ての魚から高い濃度の水銀が検出されたのです。

集落の看護師ルシエーニ・サウさん:
釣った魚は、毎日食べます。みんな、魚に水銀が含まれていることを、知っていても食べざるを得ないんです。

■“ブラジルの水俣”「助けてほしい」

アマゾンでの水銀汚染は、日本の水俣病に重ねられ、“ブラジルの水俣”とも呼ばれ始めています。

調査団責任者 パウロ・バスタ医師:
水銀問題の対応について日本はブラジルに多くのことを伝えられるはずです。健康被害を解決に導く方法や『政府がどう対応すべきか』といったことです。

ブラジルは、水銀の汚染から健康や環境を保護するための「水銀に関する水俣条約」を批准しています。ところが…。

先住民を支援する弁護士 バニュード・ペレーラ氏:
ブラジル政府は、いまこのアマゾンで起きている全ての環境犯罪を重く見ていません。単に無視しようとしているのです。

現在、アマゾンの開発を目的とした複数の法案が議会で審議されています。先住民は採掘などが“合法化”されるとして抗議を続けています。ムンドゥルク族の首長は、こうしたブラジル政府の姿勢に憤ります。

ムンドゥルク族 首長 ジュアレス氏:
ボルソナロ大統領は、きっと、アマゾンを殺したいのでしょう。私たちにとって大切なのは、お金ではないのです。世界中の人々が、生きていける環境です。

アマゾン先住民の“闘い”。世界は、どう対応するのでしょうか。

先住民協会 会長 アンデルソン氏:
日々、脅迫を受けています。皆さんに助けてほしい。ここは、私たちだけのものではなく世界中の人たちのものなんです。

動画の全編はTBS NEWS公式YouTubeへ

(報道特集1月29日放送より抜粋・編集)
※情報提供は番組ホームページへ

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February 05, 2022 at 12:06PM
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