Tuesday, October 25, 2022

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捨てられるペットたち

インフレでエネルギーや食料品の価格が高騰するイギリス。物価高で生活費の捻出が厳しくなる中、大切な“家族”でさえも手放さなくてはならない人が出てきています。その“家族”とは犬や猫といったペットたち。動物愛護に熱心とも言われるイギリスで、インフレの影響が動物たちに波及しています。(ロンドン支局記者 松崎浩子)

24%増加!?

ガラスの扉の向こう側からこちらを見つめる猫。イギリスの施設に保護されたペットです。

インフレの余波で飼い主から手放された動物たちが今、急増しています。

そもそも、約40年ぶりとも言われる記録的なインフレは、どれほどの水準なのか。ロンドン市内のスーパーをのぞいてみると…

卵は6個入りで1.75ポンド(約290円)
パスタは500グラムで2ポンド(約340円)

値札をみていると、以前に比べて価格がかなり上昇していると感じます。こうした物価高がペットにも影響を与えています。

イギリスの動物福祉団体、王立動物虐待防止協会の発表で、2022年に入り7月までに捨てられたペットが前年に比べ「24%増加した」というのです。

“飼育費が工面できない”

ロンドンの動物保護団体の担当者、レベッカ・マカイバーさんを訪ねると、異常な事態が起きていると説明してくれました。

マカイバーさん
「飼い主にお金の余裕がなくなったことで、保護されるペットがここまで増えるのは経験したことがない」

インフレの余波でペットの飼育費を工面できないという飼い主が出ているというのです。

ペットを引き取って欲しいという依頼は、2022年は6月末時点で約1200件と前年の同じ時期と比べ3割余りも増えました。特に目立つのは路頭に迷うペットたちの増加だといいます。

マカイバーさんが紹介してくれたイングリッシュ・コッカー・スパニエルの雌犬も、7月にロンドンの街をさまよっているところを保護されました。団体によると、車から放り出されたという目撃情報もあるということで、事実とすれば胸が痛みます。

コロナ禍のペット人気から一転…

コロナ禍の2020年から翌年にかけて、自宅で過ごす人が増えた結果、ペット人気が高まりました。最新のデータでは、イギリスで何らかのペットを飼っている世帯は6割を超えたとも言われています。

イギリス政府の統計では、2021年のペット関連の支出は、約96億ポンド、日本円で約1兆6000億円と過去最高に。このため、保護された犬や猫を引き取りたいという需要も伸び、ペットたちは新しい飼い主を見つけられていました。

しかし、2022年に入り、物価高で状況は急変。テレビや新聞の記事では「生活費の危機」ということばを見聞きしない日はなくなりました。

マカイバーさんの施設では、犬と猫合わせて約200匹を飼育していますが、生活が苦しい人が増える中で、今は一転して引き取り手探しに苦労する状況になっています。

団体では一度保護したペットはずっとケアし続け、依頼されればどのような場合であっても引き取る方針のため、待機リストの動物たちの数はなかなか減りません。

政府からの援助もないため、運営は苦しい状況だといいます。

マカイバーさん
「犬を飼うのにかかる平均的な費用は、年間約2000ポンド(約33万円)、猫は1500ポンド(約25万円)と言われています。ノミなどの駆除や病気の予防接種、それに、毎日の食事が必要だからです。しかし、余裕がなければ、ペットを手放さなければならない状況に陥ってしまう。助けが必要な飼い主が増えることを非常に心配しています」

“ペットフードバンク”も登場

こうした事態に歯止めをかけようと、飼い主を支援する動きも出ています。ペットの餌を無償で配布する「ペットフードバンク」です。

6月にイングランド中部のグリムズビーで立ち上げられました。イギリスには食料を支給する「フードバンク」を運営する慈善グループは多いものの、ペットフードを配る団体は珍しいといいます。

動物病院に隣接する敷地内にコンテナを設け、病院の看護師が週2日、訪れた人の対応にあたります。

コンテナの中を見せてもらうと、天井近くまでペットフードが積み上げられているのに驚きました。

ペットはアレルギーや持病があるケースもあるため、様々な種類のペットフードを用意しているのです。

看護師は品種や年齢、特徴などを丁寧に聞き取ってそれぞれのペットに合った餌を提供できるようにしています。ペットフードや人件費はすべて企業や個人の寄付で賄われています。

多い日には長蛇の列ができる日もあるといい、私たちが取材で訪れた日も、数人がペットフードを受け取りに訪れていました。

ヨークシャテリアを連れたお年寄りの男性に話を聞くと「食事などを我慢して、この子たち(ペット)の食べ物を買っていました。本当に助かっています」と安心した表情で話していたのが印象的でした。

この団体では、需要が急増しているとして、ペットフードの配布場所をこの半年近くで12か所まで拡大したということです。

クリスティーナ・プールさん
「ほとんどの飼い主は、自分の食事よりペットの食事を優先します。どうしたらよいか分からず、泣きながら私たちを訪ねてくる人もいて、本当に切羽詰まっていると感じます。まだ私たちのもとを訪れていない人たちはたくさんいて、出費に耐えられるかどうかの瀬戸際に立たされています。ここの支援はペットにとって文字通り命綱なんです」

問われるペットとの向き合い方

本格的な冬の季節が到来すれば、食料品の値上がりに加えて、暖房費も切実な問題になります。

「食料か暖房か(eating or heating)」という文言もよく耳にするようになりました。

イギリス政府は、エネルギー価格の負担を抑制する経済対策を少なくとも来年4月までは続けるとしていますが、動物愛護団体などはペットを手放す人がさらに増えるのではないかと懸念し、支援の拡充を訴えています。

ペットを手放す事態が深刻化していることは今のインフレのすさまじさを物語っていますが、一緒に過ごす大切な家族の一員であるペットとの向き合い方についても改めて問われていると感じました。

ロンドン支局記者
松崎浩子
2012年入局
欧州経済やジェンダー、環境問題などを取材
実家で飼っているペットは柴犬「大吉」

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October 25, 2022 at 03:07PM
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