土曜日朝刊別刷り「be」の「知っ得なっ得」で連載した「動物と『命の教育』」全4回を一本にまとめました。動物を通じて命の尊さを伝える「動物介在教育」。家庭でどう実践すればよいのか、金太郎と得子が話し合います。
金太郎(かねたろう) 僕が猫を飼い始めたのを知った友だちの子どもが、自分もペットを飼いたいと言い出したらしい。得ちゃん、どう思う?
得子(とくこ) 子どもの頃から様々な生き物にかかわるのは良いことだと思うよ。
金 意外な反応。得ちゃんなら「子どものわがままに付き合う必要はない!」なんて、突き放すと思っていた。
得 自分より弱い存在、自分が配慮しないと生きていけない存在が身近にいる経験を、子どもの頃に積むのは大事なこと。命の大切さや他者を思いやる心を育めるの。
金 いわゆる「命の教育」だね。
得 命の教育には様々な手法があって、実際に動物を飼育したり、ふれあったりして学ぶやり方を「動物介在教育」と呼ぶよ。保育園や小学校でウサギなどを飼っているのはその一環。でも、学びは動物との関係性が築けた先にあるから、家庭で動物を飼うことは、その意味で理想的とも言える。
金 なるほど。得ちゃんが反対しなかったのは納得だ。
得 ただ、動物介在教育を目的としてペットを飼おうというのは、本末転倒だからね。まず親自身が動物が好きで飼いたいと思っていて、しかも最期まで面倒を見るという覚悟を持っていることが、大前提だよ。
金 言われてみれば、ペットを便利な道具のように考えるのはおかしいね。親がペットを「教材」と見なし、そういう態度で接したら、子どもにとって悪い見本になるだけだ。命の教育どころか逆効果になりそう。
得 それに、犬の平均寿命は約15歳。屋内飼育の猫だと、最近は20歳を超えることも珍しくない。つまり子どもが5歳の時に飼い始めたとしたら、ペットは子どもが25歳になる頃まで生きる可能性がある。その間に子どもは受験や就職を経験して生活環境が変わっているかもしれないし、結婚して実家を出ているかもしれない。飼い始めたペットを、最期の時まで責任を持って面倒を見られるのは親だけなんだ。
金 子どもがほしがっている、教育にも良さそうだ、それなら飼ってみるか……などと短絡的に考えてはいけないんだね。
得 それと飼う決断をする前に、まずは家族でよく勉強するべきね。
金 どういうこと?
得 飼いたい動物の習性をしっかり学び、その習性にふさわしい飼育環境を自分たちが用意できるかどうか、よく考えてほしいの。散歩や日頃の世話に割ける時間はあるか、自宅の広さや構造はその動物にとって適切か、病気やケガをしたときに適切な治療を受けさせる金銭的余裕はあるか――。学び、考えるべきことは山ほどあるよ。
金 ペットショップで目が合って、「運命だ!」と衝動買いした話をたまに聞く。良くないパターンだね。
得 わかっているじゃない。ペットショップに行く前に、まず家族で勉強よ。子どもにとっては、親と一緒に勉強し、考えるところから、命の教育が始まっているとも言える。それに、動物を飼おうという時の選択肢はペットショップだけじゃない。
金 そうだ。うちの猫ももともと野良猫だった。
得 保護犬や保護猫を飼うという選択肢をぜひ検討してほしいな。事前に勉強する際には、どうして保護犬・保護猫が存在するのか、なぜ殺処分が行われているのかといったことまで含めて、子どもに伝えて。ペットを飼うことの「責任」や「覚悟」の意味がより深くわかると思う。
実際にペットを飼い始めたら、具体的にどんなことに気をつけたらいいのか。ペットを飼えない場合でも、ご家庭で動物介在教育はできるのか。二人の会話はさらに続きます。
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ペットが欲しいと子どもにせがまれたら? 家庭でできる「命の教育」:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル
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