西へ東へ、海へ川へと旅して釣りする太公望たちの奮闘記です。魚との知恵比べ、釣った魚で一杯……。目的は人それぞれながら、闘いの後の心地よい疲労と旅情は格別。今回は、朝日新聞の西田健作記者が、神奈川県の三浦半島沖で高級魚アマダイ釣りに挑戦。遊漁船の乗船料のもとをとろうと意気込んだものの……。
年に一度の「ワラサ祭り」 出かけてみたら 神奈川県・三浦半島はこちら
東京湾でドラゴン捕獲 タチウオのテンヤ釣り大ブームはこちら
アマダイ釣って、乗船料の元とろう……膨らむ妄想
タイはタイでもアマダイといえば、マダイをはるかにしのぐ高級魚です。会社近くの築地場外市場(東京都中央区)をのぞくと、1キロ当たり5千円以上。なかなか手が出せる値段ではありません。でも、釣り人ならば、買えなくても釣ればいいんです。1キロのアマダイを2匹釣れば、乗船料ととんとんに。3匹ならお釣りが……。妄想はどんどん膨らんで、釣友の和田翼さん、淺野眞さんを誘って11月下旬にアマダイ釣りに行ってきました。
向かったのは、神奈川県横須賀市久比里。久里浜駅のすぐ近くの平作川沿いに船宿が並んでいて、電車釣行でも便利な場所にあります。
この日お世話になったのは山下丸さん。午前7時30分に出船すると、船は平作川から東京湾に出て、三浦半島の先端近くの剱崎(つるぎさき)沖へと向かいます。
この日の釣りのポイントは、水深80~100メートル。アマダイは砂泥地の海底に巣穴を掘り、大概はそのなかで過ごしています。
午前8時過ぎ。船長の合図で釣り開始となりました。エサはオキアミ。2本の針に1匹ずつ刺して、海底まで届けます。約2メートルの仕掛けが海底近くを漂うようにして、アマダイを穴から誘い出すんです。
反応はあるものの、「餌取り」ばかり
ブルブル、ブルブル。さっそく竿(さお)先が震えました。魚が針にかかっていることを確認してから、電動リールの巻き上げスイッチをオン。ウイーン、ウイーンとリールが100メートルの海底から仕掛けを引き上げてきます。しばらくして姿を現したのは、20センチのトラギスでした。本命ではない魚「餌取り」ですが、天ぷらにするとおいしいのでキープすることにしました。
アマダイ釣りは、餌取りが多いことが特徴です。トラギス、キダイ、ムシガレイがその代表例。海底近くを泳いでいるこれらの魚は、みんなオキアミが大好きなんです。でも、餌取りにオキアミを食べられてばかりだと、本命のアマダイが釣れません。
爆釣を夢見てやってきましたが、この日の食いは渋く、たまに釣れてもトラギスやキダイばかり。1時間ぐらい経ったころでしょうか。竿先に一瞬反応があったものの、すぐに反応が消えたことがありました。また餌を取られたかも。無造作に電動リールのスイッチを入れると、なぜか途中で、竿先がブルブルと震え出しました。
いつの間にか釣れていた「ポニョ」
何だか変だぞ。でも、気にせずそのまま巻き続けると、何か魚がついているようです。海中をのぞき込むと、トラギスとは形が違うみたい。「アマダイだ!」。あわてて魚を取り込むと、ピンク色の魚体が姿を現しました。大きさは25センチほど。小ぶりですが、本命のアマダイをゲットしました。釣り人が狙うアマダイにはアカアマダイ、キアマダイ、シロアマダイと3種類あるのですが、最もよく釣れるアカアマダイでした。
釣り上げたアマダイは、見れば見るほど愛くるしい顔立ちをしています。小さなアマダイは、釣り人に「ポニョ」と呼ばれています。宮崎駿監督のアニメ映画「崖の上のポニョ」に出てくる魚の子のことですが、しげしげと眺めて納得。釣ったというよりも釣れたという感じだったので、釣友に冷やかされてしまいましたが、本命は本命。写真を自撮りします。
でも、後が続きません。トラギスやキダイが釣れても、アマダイは音沙汰なし。周りも似たような状況で、2時間、3時間、刻々と時間が過ぎていきます。途中、和田さんが竿を大きく曲げたと思ったら、良型のマダイでした。本命がこのポニョだけじゃ原稿が書けないかも。時間と共に焦りも増してきました。
土壇場でやってきたドラマ!
納竿まであと1時間ほど。午後1時を過ぎて、もうダメかと思っていたら、終盤にドラマが待っていました。アマダイゼロだった左隣の淺野さんが、突如、黙々とリールを巻き始めました。
ニコリともしないので餌取りかと思って見ていたら、海面に現れたのは大きなピンク色の魚体。「でかい! タモ、タモ」。この日一番のアマダイ。逆転ホームラン。淺野さんが今日の勝利者となりました。
なぜ、淺野さんが釣ったのか。それには理由がありました。オキアミを使わずに、ひそかにアオイソメをつけていたんです。食担当記者歴が長く、いまは朝日新聞SHOPで食担当バイヤーをしている淺野さんは、勝ち誇ったようにこう言いました。「魚もその日によって食べたいものが違うでしょ」。45センチのアマダイを見せつけられると、説得力があると言わざるを得ません。船長も駆け寄ってきて、記念撮影。悔しい。でも、これで原稿も書ける!
すぐに淺野さんからアオイソメを分けてもらい、自分の針に刺したのは言うまでもありません。でも、遅かった。ついに船長が納竿を告げました。時間切れ。リベンジを誓って、電動リールで巻き上げると、なぜだか微妙な重さが。最後の最後に姿を現したのは15センチ強の「ポニョ」でした。
結局、私のこの日の釣果は、一応2匹。もちろん小さすぎて元は取れませんでしたが、淺野さんの大きなアマダイを見られて良かった。
「松笠揚げ」でアマダイを堪能
大事に持ち帰ったポニョは、アマダイの定番料理・松笠揚げにしてみました。身が軟らかく、うろこが取りにくいので、うろこをつけたまま、身の方にだけ小麦粉をつけて揚げてしまう食べ方です。あっという間に食べ終わってしまいましたが、サクサクとした歯ごたえで、ビールに合う! 近いうちにもう一度行って、今度こそ元を取らなければ。
◇
気持ちよく年を越したいと、本記事掲載3日前(12月19日)にアマダイ釣りのリベンジに行ってきました。運も味方して、40センチオーバー2匹を含み、なんと1人で10匹も釣れました! これだから釣りは止められません。
◇
アカムツ、マハタ、イサキ、タチウオ……。2020年も本連載で、いろいろな釣りを紹介させていただきました。コロナ禍で船宿さんは乗船人数を減らすなどの対策を迫られていますが、密になる場面を避け、しっかりと感染対策をしながら、釣りを楽しんでいきたいと思っています。みなさんもよい年をお迎えください。
■山下丸
https://yamashitamaru.jp/
PROFILE
-
釣り大好きライター陣
安田明彦、猪俣博史、西田健作、石田知之、木村俊一
-
西田健作
朝日新聞記者
1971年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。15年ほど前に千葉県浦安市に引っ越し、ディズニーランドのすぐ近くで魚が釣れることを知り、釣りにはまる。朝日新聞社では文化くらし報道部で宗教・歴史・美術担当。2020年4月から7年ぶりに管理職(デスク)から現場の記者に戻ってはりきる一方で、相変わらず週末の釣りにのめり込んでいる。
"魚" - Google ニュース
December 22, 2020 at 05:05AM
https://ift.tt/37EQ6Oz
まるで「ポニョ」 海底の巣穴から高級魚アマダイを釣り上げろ - 朝日新聞デジタル
"魚" - Google ニュース
https://ift.tt/2Xkxf4q
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
No comments:
Post a Comment