熱海市伊豆山で発生した大規模土石流は8日、新たに2人の死亡が確認され、死者は計9人になった。同日身元が確認された天野稲子さん（85）と長男初さん（56）は鮮魚店「魚春」を親子で経営していた。地元住民らによると、相模湾の魚を中心に扱い、繁盛していたという。 地元住民や家族によると、魚春は稲子さんの夫が半世紀以上前に始めた。夫が8年ほど前に亡くなった後は、初さんと2人で同所で切り盛りしていたという。 稲子さんが主に店番を務め、初さんが商品の配達役だった。刺し身や海産物の揚げ物を扱い、地元住民の間で特においしいと評判だったのは「海鮮オードブル」。宴会などでよく注文されていた。 2人の自宅は同市網代にあり、初さんが運転する軽トラックで店まで通っていた。店にいたところを土砂災害の被害に遭ったとみられる。 初さんと小中学校の同級生で、仕事ぶりをよく知る漁師水野伸之さん（56）は「初は真面目で責任感を持って仕事をしていた。普段は口数が少ないが、お酒を飲むとケラケラとよく笑った。あの愛くるしい笑顔をもう見られないと思うとつらいし、寂しい。残念の一言に尽きる」と声を震わせた。 稲子さんの次男（54）＝神奈川県伊勢原市＝は2人と音信不通になってから、網代の実家や遺体安置所を訪れるなど情報収集に奔走した。「とにかく早く見つかって」－。無事を祈ったが、その願いはかなわなかった。結婚を機に熱海を離れた次男を稲子さんは何かと気に掛けていたという。2カ月ほど前、稲子さんから「元気？」と電話をかけてきたのが、最後の会話になった。
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July 09, 2021 at 07:10AM
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